冠攣縮性狭心症の危険因子

冠攣縮性狭心症を誘発する危険因子には、大きく分けて環境要因と遺伝的要因の2つがあります。環境要因にはいくつかのものが指摘されていますが、その代表的な因子が喫煙、飲酒、脂質異常、ストレスの4つ。ここでは、冠攣縮性狭心症の危険因子について詳しく解説します。

冠攣縮性狭心症を招く4つの環境要因

冠攣縮性狭心症を招く代表的な環境要因として、以下、喫煙、飲酒、脂質異常、ストレスの4点について詳しく見ていきましょう。

喫煙

冠攣縮性狭心症は喫煙している日本人の発症ケースが多く、熊本加齢学研究所・熊本機能病院循環器内科の研究データによると、冠攣縮性狭心症の発症者における喫煙者の割合は80%を超えるというデータもあります。
これまでのさまざまな研究データにより、煙草の煙には「フリーラジカルがNO(一酸化窒素)を不活性化させ、血管内皮細胞を直接障害する」「タバコにより酸化ストレスが増加し、各種細胞の炎症を活性化させる」といった作用があることがわかっており、喫煙によって冠攣縮の発生が促されると考えられています。
現在の医療現場において、冠攣縮の要素を持つ患者に対して禁煙指導を行なうことは必須となっています。患者本人の意志によって冠攣縮のリスクを大幅に低下させることができる点において、禁煙は非常に重要な予防用と位置付けられています。

タバコの煙と冠攣縮性狭心症についての研究

熊本加齢学研究所・熊本機能病院循環器内科の研究グループでは、タバコの煙の抽出液が、ウサギの動脈にどう影響するかを調査した研究について報告しています。

正常では血管拡張を示すアセチルコリンなどの物質に対して、タバコの煙の抽出液で処置をされた血管は、拡張機能が消失されることが示された。

また、抗酸化物質の投与にて、この異常反応が減弱したことによりタバコの煙は酸化ストレスを介して、血管拡張能を消失させることが示されている。さらに、喫煙者ではアセチルコリンに対して冠動脈が対象と比較して優位に収縮することが示されている。

タバコの煙を吸い込むと、肺を介して酸化ストレスや炎症が発生し、血管内皮機能障害や動脈硬化の因子を活性させます。そのため全身の血管障害を引き起こしますが、その代表的なものが冠攣縮であると考えられます。

また、冠攣縮と酸化ストレス、喫煙の関係については、山梨大学医学部内科でも研究が行われています。

喫煙者または冠動脈硬化疾患を有する患者においては酸化ストレスが増加し,血管トーヌス亢進の原因の一つとなっていることが知られている。冠攣縮例においても,酸化ストレス亢進に対し防御的に働く血中ビタミンCおよびEの濃度が低下していること,これらの抗酸化ビタミン剤を投与すると血管内皮依存性拡張反応が改善することなどが示されており,冠攣縮の機序に酸化ストレスが関与している可能性がある。

冠攣縮例で酸化ストレスが増強している原因は不明であるが,冠攣縮の要因である喫煙および精神的ストレスはいずれも酸化ストレスを増加させることが知られており,これらが関与している可能性もある。

以上のことから、冠攣縮性狭心症には喫煙が大きく関わっていると考えられます。そのため、治療や予防にあたっては、禁煙が必須であり、医療機関による禁煙の指導は欠かすことができません。

飲酒

冠攣縮性狭心症は早朝に発症することが多いとされる発作ですが、とりわけ、深酒をした翌朝における発症率が高いことで知られています。その理由は、体内がマグネシウム欠乏に陥っているからとされています。
冠攣縮性狭心症の症例を確認すると、多くの場合、患者の体内ではマグネシウム不足を見ることができます。逆にマグネシウム製剤の静脈注入が、冠攣縮性狭心症に高い予防効果を持つことも実証済みです。これらの観点から、冠攣縮性狭心症とマグネシウム不足との間には、密接な関連性があることが分かります。
アルコールには、体内のマグネシウムを過剰に排出する性質があるため、過剰に摂取すると体内はマグネシウム欠乏の状態に陥り、その結果、冠攣縮性狭心症を誘発する可能性が高まります。患者に対してはアルコールの摂取制限、または禁酒の指導を行なう必要があります。
なおマグネシウムの静脈注射における冠攣縮性狭心症の予防効果は確認されているものの、マグネシウム製剤の内服によるその予防効果については、いまだ確認されていません。

 

脂質異常

冠攣縮性狭心症の患者の血液検査をすると、多くの場合、中性脂肪の代謝異常やコレステロール値の異常など、脂質に何らかの異変が見られます。冠攣縮性狭心症と脂質異常については様々な研究報告がありますが、中でもHDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少については注目したいところでしょう。脂質の異常により体内に活性酸素が増大することが、冠攣縮性狭心症の一因ではないかと推測されています。

 

ストレス

ストレスによる自律神経の乱れも、冠攣縮性狭心症を誘発する要因の一つとされています。
学説の中には、自律神経の乱れによって副交感神経(自律神経のひとつ)が優位となった際に発作が誘発されるのではないか、というものがあります。副交感神経は、夜間や睡眠中などの安静時によく働く自律神経なので、冠攣縮性狭心症の発症タイミングに照らすと合理性のある学説です。
一方で心拍変動を通じた検証では、逆に交感神経(ストレスなどで精神が興奮しているときによく働く自律神経)の影響によって冠攣縮発作が誘発されている、との報告が多数あります。
現状、どちらの説が正しいかについては結論が出ていませんが、少なくとも、ストレスによる自律神経の乱れが発作に何らかの影響を与えることは間違いないでしょう。

冠攣縮性狭心症における遺伝的要因

冠攣縮性狭心症の原因の多くは、上で説明した生活習慣に起因するものが多いとされます。
ただ、中には生活習慣に何ら問題がないにも関わらず、冠攣縮の発作を起こしている人も見られます。あるいは、食生活においては欧米人よりも健康的な日本人において、欧米人の数倍もの冠攣縮性狭心症患者が多いというデータもあります。

 

こうした現状から、以前より冠攣縮性狭心症の遺伝的要素が指摘されてきましたが、昨今の遺伝子解析技術の進歩によって、冠攣縮の発作と遺伝との関連が概ね明らかになりつつあります。ちなみに現在、冠攣縮性狭心症に関わる遺伝的要因として指摘されているのは、内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子Glu298Asp多型、eNOS遺伝子-786T/C多型など。それぞれの遺伝的因子が冠攣縮性狭心症とどれほどの関連性を持っているかについては、まだ期待値の段階。今後の研究の進展によって、遺伝性による冠攣縮のオーダーメイド治療の可能性が広がっていくことでしょう。

生活習慣の見直しを

突然死のリスクがある冠攣縮性狭心症について、発作の危険因子をご紹介しました。
これら因子の中で特に注目したい点は、遺伝的な要因があること。狭心症の多い家系や、心筋梗塞でな亡くなった親族のいる家系については、ご自身にもその体質が遺伝している可能性があります。遺伝の可能性がある中で、さらに喫煙、過度のアルコール摂取等が加われば、いよいよ冠攣縮の発作が起こる可能性が高まるでしょう。
冠攣縮性狭心症を予防するためには、遺伝の可能性の有無にかかわらず、まずは生活習慣を根本的に見直すことが非常に大事になってきます。

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