冠攣縮性狭心症の危険因子

冠攣縮性狭心症を誘発する危険因子には、大きく分けて環境要因と遺伝的要因の2つがあります。環境要因にはいくつかのものが指摘されていますが、その代表的な因子が喫煙、飲酒、脂質異常、ストレスの4つ。ここでは、冠攣縮性狭心症の危険因子について詳しく解説します。

冠攣縮性狭心症を招く4つの環境要因

冠攣縮性狭心症を招く代表的な環境要因として、以下、喫煙、飲酒、脂質異常、ストレスの4点について詳しく見ていきましょう。

喫煙

喫煙が冠攣縮性狭心症を誘発する重大な要因であることは、医学会でも定着した見解となっています。多くの研究者にるデータにおいて、喫煙と冠攣縮性狭心症との密接な関連が証明されています。
煙草の煙には酸素の他にも、一酸化炭素、一酸化窒素などの酸化物が多く含まれています。これら酸化物が体内に入ることにより、活性酸素が急激に増大。これら活性酸素が細胞の炎症反応を活性化させ、冠動脈の攣縮を誘発するとされています。
現在の医療現場において、冠攣縮の要素を持つ患者に対して禁煙指導を行なうことは必須となっています。患者本人の意志によって冠攣縮のリスクを大幅に低下させることができる点において、禁煙は非常に重要な予防用と位置付けられています。

 

飲酒

冠攣縮性狭心症は早朝に発症することが多いとされる発作ですが、とりわけ、深酒をした翌朝における発症率が高いことで知られています。その理由は、体内がマグネシウム欠乏に陥っているからとされています。
冠攣縮性狭心症の症例を確認すると、多くの場合、患者の体内ではマグネシウム不足を見ることができます。逆にマグネシウム製剤の静脈注入が、冠攣縮性狭心症に高い予防効果を持つことも実証済みです。これらの観点から、冠攣縮性狭心症とマグネシウム不足との間には、密接な関連性があることが分かります。
アルコールには、体内のマグネシウムを過剰に排出する性質があるため、過剰に摂取すると体内はマグネシウム欠乏の状態に陥り、その結果、冠攣縮性狭心症を誘発する可能性が高まります。患者に対してはアルコールの摂取制限、または禁酒の指導を行なう必要があります。
なおマグネシウムの静脈注射における冠攣縮性狭心症の予防効果は確認されているものの、マグネシウム製剤の内服によるその予防効果については、いまだ確認されていません。

 

脂質異常

冠攣縮性狭心症の患者の血液検査をすると、多くの場合、中性脂肪の代謝異常やコレステロール値の異常など、脂質に何らかの異変が見られます。冠攣縮性狭心症と脂質異常については様々な研究報告がありますが、中でもHDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少については注目したいところでしょう。脂質の異常により体内に活性酸素が増大することが、冠攣縮性狭心症の一因ではないかと推測されています。

 

ストレス

ストレスによる自律神経の乱れも、冠攣縮性狭心症を誘発する要因の一つとされています。
学説の中には、自律神経の乱れによって副交感神経(自律神経のひとつ)が優位となった際に発作が誘発されるのではないか、というものがあります。副交感神経は、夜間や睡眠中などの安静時によく働く自律神経なので、冠攣縮性狭心症の発症タイミングに照らすと合理性のある学説です。
一方で心拍変動を通じた検証では、逆に交感神経(ストレスなどで精神が興奮しているときによく働く自律神経)の影響によって冠攣縮発作が誘発されている、との報告が多数あります。
現状、どちらの説が正しいかについては結論が出ていませんが、少なくとも、ストレスによる自律神経の乱れが発作に何らかの影響を与えることは間違いないでしょう。

冠攣縮性狭心症における遺伝的要因

冠攣縮性狭心症の原因の多くは、上で説明した生活習慣に起因するものが多いとされます。
ただ、中には生活習慣に何ら問題がないにも関わらず、冠攣縮の発作を起こしている人も見られます。あるいは、食生活においては欧米人よりも健康的な日本人において、欧米人の数倍もの冠攣縮性狭心症患者が多いというデータもあります。

 

こうした現状から、以前より冠攣縮性狭心症の遺伝的要素が指摘されてきましたが、昨今の遺伝子解析技術の進歩によって、冠攣縮の発作と遺伝との関連が概ね明らかになりつつあります。ちなみに現在、冠攣縮性狭心症に関わる遺伝的要因として指摘されているのは、内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子Glu298Asp多型、eNOS遺伝子-786T/C多型など。それぞれの遺伝的因子が冠攣縮性狭心症とどれほどの関連性を持っているかについては、まだ期待値の段階。今後の研究の進展によって、遺伝性による冠攣縮のオーダーメイド治療の可能性が広がっていくことでしょう。

生活習慣の見直しを

突然死のリスクがある冠攣縮性狭心症について、発作の危険因子をご紹介しました。
これら因子の中で特に注目したい点は、遺伝的な要因があること。狭心症の多い家系や、心筋梗塞でな亡くなった親族のいる家系については、ご自身にもその体質が遺伝している可能性があります。遺伝の可能性がある中で、さらに喫煙、過度のアルコール摂取等が加われば、いよいよ冠攣縮の発作が起こる可能性が高まるでしょう。
冠攣縮性狭心症を予防するためには、遺伝の可能性の有無にかかわらず、まずは生活習慣を根本的に見直すことが非常に大事になってきます。

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