冠攣縮性狭心症を改善させる運動療法

冠攣縮性狭心症の患者に多く見られるのが、肥満です。肥満の人は高血圧や脂質異常症を併発していることが多いため、冠攣縮性狭心症の発症リスクを同時に複数持っていると考えても良いでしょう。ここでは、発作の予防・改善に向け、適正な体重を維持するための運動療法について説明します。

効果的な運動療法と注意点

肥満を始め、いわゆる生活習慣病は冠攣縮性狭心症の発症リスクを高めます。生活習慣病を改善するためには、何より肥満・太り気味を解消することが大事。そのためには、食事療法と併せて運動療法を行なうことが効果的です。

なお運動療法については、主治医からの指導が入る可能性があるので(運動処方と言います)、その際にはしっかりと指示にしたがってください。また、運動負荷検査によって陽性が確認された人については、医師から何も指導がなくても「運動をやって良いかどうか」を訪ねるようにしましょう。

冠攣縮性狭心症の方が医師から指導される可能性がある運動療法は、一般に有酸素運動と呼ばれるものです。

有酸素運動とは

有酸素運動とは、普段通りに呼吸をしながらできる運動の総称です。ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、ゴルフなどです。逆に、短距離走やダンベル運動、腕立て伏せなどの呼吸が苦しくなる運動を無酸素運動と言います。無酸素運動と対比すれば、有酸素運動のイメージがつきやすくなるでしょう。

最も手軽に行なえて、かつお勧めの有酸素運動はウォーキングです。ウォーキングと言えば少々大げさですが、つまり散歩をすれば良いだけです。1回につき30分程度の散歩を目安にして、できれば毎日、少なくとも1日おきには行ないましょう。近所のスーパーに歩いて買い物に行くといった程度でも、立派なウォーキングです。習慣化することが大事なので、毎日散歩コースを変えるなど、飽きの来ないように工夫してみてください。

「国立循環器病研究センター」では心臓や血管に負担をかけない運動の方法を以下のように示しています。

国立循環器病研究センター:[20]運動と循環器病「効果的な運動とは?4つのポイント」

心臓や血管に過剰に負担をかけない運動としては、筋肉の収縮と弛緩を交互に繰り返すこととなる「動的運動」が適しています。

動的運動はウォーキングやジョギング、水泳など、全身を使い、長時間にわたって行う運動が該当します。これにより筋肉の収縮と弛緩がポンプの働きを示し、心臓に戻る血液の循環を助けます。

その逆に相撲や柔道、レスリングやウェイトリフティングなど、短時間に大きな力を発揮する「静的運動」は筋肉を増強させる効果があるものの、筋肉は収縮と弛緩をあまり繰り返すことがありません。

また、静的運動は動的運動よりも血圧が上がりやすため、心臓に大きな負担を強いることになります。そのため心血管疾患を持つ人や高齢者には静的運動は向いていないのです。

その点、動的運動であれば大量の血液を無理なく全身に循環させることができるため、心臓にかかる負担も静的運動と比較して少なくて済みます。

さらに、運動療法には動的運動であり「有酸素運動」でもあるものが適しています。

有酸素運動に含まれる運動は、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、エアロビクスダンス、水泳など。ゆっくりと呼吸を繰り返しながら持久的な運動を行うのが特徴です。

有酸素運動は体脂肪の燃焼に効果的で、心臓の負担も少なく、肥満解消や糖尿病予防などに有効です。

その一方で、短距離を全力疾走するような呼吸の追いつかない激しい運動は「無酸素運動」と呼ばれており、体に急激な負担がかかることから運動療法には向いていません。

全力を出さずに運動する

運動療法における有酸素運動では、全力を出さないように心がけましょう。

運動しているとついがんばって良い記録を残そうとしたり、もっと上の段階にステップアップしようとチャレンジしたくなるものですが、あくまで健康のために行っていることを忘れてはいけません。

運動療法は全力の40~60%程度の力で行うのが安全だと言われています。これは実際に運動した際に、「いくらでも続けていられる」と感じたり、汗をじんわりと角程度。

大切のなのは安全に運動を行うこと。病状や年齢、個人の体力、その日の体調などを考慮して、なるべく軽めのものから慎重に運動を開始するようにしましょう。

運動は20分以上続ける

有酸素運動の脂肪燃焼は、運動後すぐに燃焼効果が現れるというものではありません。

焚火のように最初は脂肪の燃え方も弱く、しばらく時間が経つと強い燃焼効果をもたらすようになります。

その脂肪燃焼効果がより高くなるのは有酸素運動を続けて20分以上経ってから。1回20~60分程度の有酸素運動が理想的だと言われています。

1回にそれだけの運動をする体力が続かない場合は、20~30分の運動を1日に何度か行うと良いでしょう。

もしも有酸素運動を始めて翌日に疲れが残るようであれば、体力以上の運動をしすぎた可能性があります。

疲れを残さないよう、自分に合ったペースで運動を行うことが大切です。

心臓や血管に負担をかけることなく行う運動療法には、向いている運動と向いていない運動、そして正しいやり方があります。

安全に無理なく、自分のペースで運動を行うことが何よりも大切です。

運動療法を摂り入れる際の注意点

肥満を解消する上で非常に効果的な方法は、有酸素運動以外にも筋トレがあります。筋肉の量が増えることで基礎代謝がアップし、何もしていなくてもエネルギーが効率的に消費される状態となります。

ただし心臓病患者における筋トレは、禁忌とはされていないものの、事前に主治医のチェックを受ける必要はあります。加えて心臓リハビリ指導師や理学療法士からの指導も必須とされています。くれぐれも自己判断で激しい筋トレを行なうことは避けましょう。

また、代表的な有酸素運動の一つとして水泳がありますが、水温によっては不整脈や血圧上昇のリスクがあるので要注意です。運動療法に水泳を取り入れる際には、事前に主治医に相談するようにしてください。

「国立循環器病研究センター」では、心臓病の患者のリハビリと再発予防のための運動について、次のような注意点を記載しています。

国立循環器病研究センター:[13]心臓リハビリのQ&A-「運動メニューの留意点」

運動を行う際に注意しなくてはならないのは、体調と環境です。具体的には次のような点に注意が必要です。

  • 体調が優れないときは運動を控える
  • 野外で運動する場合は天候の悪い日は行わない
  • 暑いときには室内であっても熱中症に気をつけて水分補給を心がける
  • 寒いときは防寒対策を充分に行う
  • 運動の前後に準備体操やストレッチを必ず行う

また、旅行先で運動する際は普段と違う環境下で行うこととなるので無理しないように気をつけましょう。

狭心症や心筋梗塞などの発作は朝に起こりやすいというデータがあります。

朝に運動を行う場合は起床後1時間以上してから行うようにしてください。その際は準備運動も充分に。

無理のない程度に習慣化することが大事

冠攣縮性狭心症は、体を動かしているときよりも安静時に頻発する発作です。とは言え、あまり激しい運動を行なうと心臓に負担がかかるので、無理をしない程度に、かつ習慣的に運動を行なうようにしましょう。

単に痩せれば良いというものではない

一般に、適正な体重を維持するためには食事療法が優先されがちです。総摂取カロリーを減らすことで体重を落とす、という方法です。

食事の量を減らせば、確かに見た目は痩せることができるでしょう。体重も適正範囲まで落とせるかも知れません。しかしながら、運動を伴わない減量は、隠れ肥満を招く可能性があるので要注意です。隠れ肥満とは、見た目は普通の体型であるにも関わらず脂肪の比率が高い状態です。

冠攣縮性狭心症の予防・改善には、体に付いた脂肪の量を減らすことが大事。運動療法をせずに食事療法だけに頼った方法は、脂肪ではなく筋肉を減らすことでの減量になる恐れがあります。

冠攣縮性狭心症における運動療法・食事療法は、美容上のダイエットを目的としたものではありません。あくまでも脂肪を減らすことが目的なので、食事療法と並行して運動療法もしっかりと行なってください。

 

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