冠攣縮性狭心症になりやすい人には、いくつかの共通点があります。体質上の遺伝が発症の原因に関係している人もいますが、多くの場合は、後天的な生活習慣の中に原因があると考えられます。ここでは、冠攣縮性狭心症になりやすい人、および、遺伝による冠攣縮性狭心症について詳しく解説しています。

なりやすい人

冠攣縮性狭心症は、遺伝的な要素で発症する場合もあります。ただし、体質的な遺伝的要素があるからと言って、必ずしも冠攣縮性狭心症を発症する訳ではありません。逆に、遺伝的要素がまったくないにも関わらず、冠攣縮性狭心症を発症する人もいます。

いずれの場合においても共通している要因の一つが、生活習慣。すでに冠攣縮性狭心症を発症している人はもちろん、いかなる人であっても、生活習慣に注意して過ごすようにしてください。

以下、冠攣縮性狭心症になりやすい生活習慣について「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)」を参考に解説します。

喫煙習慣のある人

冠攣縮性狭心症と生活習慣との関連においては、様々な要因が認められていますが、中でも特に多くの臨床データにおいて共通している原因が喫煙習慣です。喫煙習慣のある人とない人を比べると、前者における冠攣縮性狭心症の発症率が際立って高いとされています。

各種の生活習慣病も冠攣縮性狭心症の要因として知られていますが、それら生活習慣病を持たない人においても、喫煙習慣があるというだけで冠攣縮性狭心症の発症率は顕著に高まります。

煙草の煙が誘因となる活性酸素の増大が血管に様々な影響を与えることで、冠攣縮性狭心症の発症へと至ると考えられています。

現在、いかなる医療移管であれ、冠攣縮性狭心症の治療における禁煙指導は必須項目となっています。

過度な飲酒習慣のある人

深酒をした翌朝に冠攣縮性狭心症を発症する例が多く見られるように、かねてから飲酒と冠攣縮狭心症との関連は指摘されてきました。

飲酒が冠攣縮性狭心症を引き起こす原因と考えられているのが、マグネシウム不足。冠攣縮性狭心症を発症している患者の多くにマグネシウム不足が見られますが、飲酒はまさにマグネシウム不足を誘発する大きな要因として知られています。アルコールがマグネシウムの尿排泄を促す、というメカニズムです。

現在、冠攣縮性狭心症の予防指導として、医療機関ではアルコール摂取量の制限が行なわれています。制限を守れない患者に対しては、禁酒指導を行わざるを得ないでしょう。

なお、マグネシウム製剤は内服による冠攣縮性狭心症の予防効果について、有効性はあると考えられていますが、臨床データはありません。

脂質異常・糖代謝異常が見られる人

冠攣縮性狭心症を有する患者の多くに、脂質異常や糖代謝異常が確認されています。簡単に言えば、いわゆるメタボリック症候群の人たちには、冠攣縮性狭心症のリスクが潜んでいる、ということです。

肥満は、冠攣縮性狭心症のみならず、動脈硬化、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞など、命に関わる様々な病気を誘発するベースにあるもの。日頃の食習慣を見直し、かつ運動を習慣化するなど、医療機関からの適切な指導のもとで生活習慣病を解消していきましょう。

ストレスを多く抱えている人

ストレスがもたらす様々な自律神経への影響が、冠攣縮性狭心症の発症要因になっていると指摘されています。

自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があります。交感神経とは、興奮や緊張などを司る神経系。副交感神経とは、安心やリラックスを司る神経。これらは互いにバランスを取りながら働いているのですが、ストレスが要因となりバランスが崩れてしまうことがあります。

バランスを失った自律神経は、交感神経が優位になったり、逆に副交感神経が優位になったりなどしますが、現状、どちらが優位になることで冠攣縮性狭心症を誘発するかは分かっていません。ストレスによる自律神経の乱れが発作の誘因となる、ということだけは、多くの

データから判明しています。

40~50代の比較的若い人

狭心症を大きく分けると、冠攣縮性狭心症と労作性狭心症。安静時に起こりやすい発作が前者で、体を動かしている時に起こりやすい発作が後者です。

これらのうち冠攣縮性狭心症は、40~50代の働き盛りの世代に多く発症していることが特徴です。まだ体が若く、かつ既往歴がないからと言って安心はできません。

日本人

冠攣縮性狭心症を含め、他のタイプの狭心症であったとしても、その背景には生活習慣の乱れが大きな要因であることが指摘されています。中でも特に大きな理由が、食生活の乱れです。

ところが、食生活においては欧米人よりもヘルシーな文化を持つはずの日本人において、欧米人よりも高頻度に冠攣縮性狭心症が見られることが分かっています。かねてから、この背景には民族的な遺伝の要素があるのではないか、と言われてきました。

冠攣縮性狭心症と遺伝との関係については後述しますが、いずれにしても我々が日本人である以上、遺伝的リスクを抱えている可能性があることを理解しておきましょう。

冠攣縮狭心症と遺伝との関係

冠攣縮性狭心症を含む、いわゆる虚血性心疾患の発症率は、欧米人に比べると、日本人のほうが低めです。

その一方で、虚血性心疾患で搬送される患者のうち、冠攣縮を起こしている患者の比率を確認すると、逆に、欧米人に比べて日本人のほうが多め。あるデータでは、虚血性心疾患の発症者のうち冠攣縮を併発している患者の比率は、欧米人の37%に対し、日本人の80%とされています。

虚血性心疾患全体の発症率が、日本人よりも欧米人に多いことは、食習慣の違いから容易に説明が可能です。

しかしながら冠攣縮の発症率が、欧米人よりも日本人に圧倒的に多いことは、遺伝的な要因を抜きにして説明することができません。

現在、冠攣縮性狭心症と関連しているいくつかの遺伝子変異が確認されています。具体的には、血管内皮機能を直接的に低下させる「内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)」、血管平滑筋の収縮を促す「ホスホリパーゼC-δ1(PLC-δ1)」、一酸化窒素の生成に影響を持つ「オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)」などの遺伝子変異です。

これら遺伝子変異に基づく冠攣縮性狭心症については、まだ研究途上。いずれ、患者の個体における遺伝子異常を確認し、これに対するオーダーメイドの治療方法が確立するのではないか、と期待されています。

副作用の不安がない狭心症治療薬の可能性

冠攣縮性狭心症の発作が起こった場合、すぐに適切な薬を服用すれば、ほどなく発作は治まります。ただし、これら従来の薬は低血圧症を誘発するなどの副作用が問題となっていました。攣縮を起こした異常血管のみならず、攣縮を起こしていない健康な血管にまで作用を及ぼすことが副作用の原因です。

昨今、この副作用の問題を解消する可能性のある新たな薬効成分が発見されました。それが、青魚の脂分などに多く含まれているEPAです。ドラッグストアのサプリメントコーナーなどでもよく目にする、お馴染みの成分でしょう。

山口大学の小林誠教授らの研究グループは、このEPAに冠攣縮を予防する働きがあることを発見。なおかつ、攣縮の異常を生じた血管に対してのみ、選択的に作用が働くことを実験から見出しました。

EPAは熱に弱く、これを薬剤として利用できるよう抽出することは困難とされていましたが、同教授らは、EPAの構造を破壊しないまま、冠攣縮に効果的なEPAを高濃度で抽出する技術も開発。今後、冠攣縮性狭心症の治療薬として広く活用されることが期待されています。

なお、ドラッグストアなどで手に入るサプリメントのEPAには、冠攣縮性狭心症の発作を治す働きはありません。通常のEPAと、教授らが発見した「小林式EPA」とは別物であると考えてください。

注目の成分「小林式EPA」開発の経緯やメカニズム、また、唯一「小林式EPA」が配合されている商品の説明は以下のサイトで確認してください。

 

心筋梗塞・狭心症を予防
するためには?