冠攣縮性狭心症の検査・診断方法

冠攣縮性狭心症かどうかを診断するためには、精密な検査をする必要があります。検査には様々な方法がありますが、身体に一定の危害が伴う検査(注射など)のことを侵襲的検査、身体に一切の危害が伴わない検査のことを非侵襲的検査と言います。

侵襲的検査と非侵襲的検査

特定の病気の有無、またはその状態、程度などを検査する際、その検査方法は大きく侵襲的検査と非侵襲的検査の2つに分かれます。 一般に侵襲的検査とは、患者に何らかの肉体的危害が生じる検査方法のこと。太ももや手首からカテーテルを挿入して心臓の冠動脈の状態を確認する検査は、侵襲的検査の典型です。

それに対して非侵襲的検査とは、患者に一切の身体的危害を与えずに行なう検査方法のこと。MRI検査や尿検査などが非侵襲的検査の代表です。また薬剤の注射による検査についても、体への危害が極めて小さいため、一般には非侵襲的検査に分類されます。

患者の気持ちに立てば、身体への危害の有無よりも、むしろ不安感の強弱の点において、侵襲的検査よりも非侵襲的検査のほうが歓迎されることは言うまでもありません。

冠攣縮性狭心症の検査においても、同じく侵襲的検査と非侵襲的検査があります。それぞれ簡単に見ていきましょう。

「侵襲的検査における注意点」の中で、主に高齢者に対し検査を行う場合について、次のように述べられています。

老年医学会雑誌第50巻2号:「侵襲的検査における注意点」

急性期医療の現場において、高齢患者に対しても侵襲的検査(体に一定の危害が伴う検査)が行われることが多くなってきています。

最近は内視鏡や画像診断の技術が向上し、侵襲的検査を行うケースが増加してきているため、高齢者にとっては負担なっています。

検査によって合併症が発症したり、検査が負担となって病気そのものが悪化することのないよう、高齢者へ侵襲的検査を行う場合は若年者よりも細心の注意が必要です。

特に高齢者は腎機能や心肺機能など臓器の機能が落ちている場合が多く、認知能低下によって検査への協力が得られにくいといったケースもあるなど、侵襲的検査のリスクは高まります。

高齢者に対し内視鏡検査などの侵襲的検査を行う際は、検査の前に脱水の有無を確かめ、出血を誘発する可能性のある抗血栓薬についても事前にしっかりと調整し、鎮静薬の過剰な投与を防ぐ必要があります。

造影剤検査でも同様に脱水の有無の確認し、造影剤腎症の発生の予防に努め、さまざまなリスクを考慮して行わなければなりません。

このように特に高齢者に対する侵襲的検査については、医療機関や医師は充分な配慮を行い、検査の前に充分なインフォームドコンセントを得る必要があるのです。

冠攣縮性狭心症における各種の検査方法

冠攣縮性狭心症の有無、または病態を正確に診断するためには、前提として何らかの検査を受ける必要があります。検査方法には様々なものがありますが、他の疾病の検査と同様、大きく分けると侵襲的検査と非侵襲的検査の2種類があります。

侵襲的検査

冠攣縮性狭心症における侵襲的検査の多くは、カテーテルを使用したものになります。カテーテルとは、柔軟性の高いストロー上の長い医療器具。これを太ももや手首の血管などから挿入し、心臓の冠動脈までスルスルと侵入させて内部の状態を確認します。

冠攣縮性狭心症におけるカテーテルの使用目的は様々です。たとえばカテーテルの先端から薬剤を放出し冠動脈の造影画像を確認するため、あるいは、カメラ付きのカテーテルを挿入し冠動脈内部の状態を肉眼で確認するため、などです。

冠攣縮性狭心症における主な侵襲的検査は、アセチルコリン負荷試験、エルゴノビン負荷試験、冠血流測定、冠血管内視鏡、血管内超音波などです。

なおカテーテルを使用する検査は、内容によって非常に高度な技術を必要とされることがあります。安全に検査をしてもらうためには、検査症例の豊富な信頼ある病院を選んだほうが良いでしょう。

アセチルコリン負荷試験

アセチルコリンは本来、動脈を拡張するための薬剤のこと。

ただし、攣縮しやすい部位においては血管が収縮する作用があることから、冠攣縮性狭心症の検査には頻繁に用いられています。検査ではカテーテルによって心臓の冠動脈に直接アセチルコリンを注入します。

エルゴノビン負荷試験

エルゴノビンは攣縮を誘発する薬剤の一種です。カテーテルで薬剤を直接注入し、攣縮の発症に有無を見極めます。

エルゴノビン負荷試験の検査は基本的にアセチルコリン負荷試験と同じ内容。そのためどちらの方法を用いるかは医療機関や医師の判断にゆだねられています。安全性においては攣縮時間が短いアセチルコリンのほうがエルゴノビンに比べて高いと言われています。

冠血流測定

冠動脈が狭くなっている部分で、血流にどの程度の問題があるかを調べる検査です。

冠攣縮性狭心症で用いられる場合のこの検査は、決して簡単なものではありません。ときには合併症を起こすリスクもはらんでいるため、技術力の高い医療機関や医師のいる病院で受けることが望ましいとされています。

冠血管内視鏡

血管内視鏡で冠動脈の内側の血管の壁の状態を調べる検査です。

主に検査によって冠動脈の内部にできた傷や血栓の有無などを確認します。冠攣縮狭心症の検査では病気の発見よりもむしろ、疾患の状態を確かめたりメカニズムを解明するために用いられています。

血管内超音波

カテーテルの先端に超音波を照射する装置を取りつけ、冠動脈に挿入して血管の内部を確認するために行います。

狭心症や心筋梗塞の原因となる冠動脈の内側の動脈硬化を検査します。

非侵襲的検査

冠攣縮性狭心症における非侵襲的検査の代表は、心電図。体に電極を貼り付けて、心臓のリズムを確認する検査法です。患者の身体への危害は一切なく、もちろん痛みも一切ありません。多くの人が、何らかの検査で経験済みと思われます。心電図のみで冠攣縮性狭心症の診断ができるのであれば、これほど安心なことはありません。

しかしながら狭心症の検査は、発作が起こっているときに行わなければ、何ら異常値を検知することができません。発作が起こっていないときに心電図検査を受けても、そこには健康なリズムが確認されるだけです。

そこで、より精度の高い非侵襲的検査として、携帯型の心電図(ホルター心電図)を24時間装着する方法や、検査の際に何らかの方法によって人工的に冠攣縮の発作を起こす方法などが採られます。

人工的に冠攣縮を起こす方法は、運動負荷と過換気不可の2種類。患者に運動をさせたり、または過剰に呼吸させたりなどし、冠動脈に攣縮が起こるかどうかを確認します。

他にも、圧迫を受けた血管の戻り具合を確認する内皮機能負荷や、注射で注入した薬剤の巡り具合を確認する心筋シンチグラムなども、冠攣縮性狭心症における代表的な非侵襲的検査として知られます。

運動負荷検査

狭心症の疑いがある患者に対し、軽く運動をさせることで軽度の狭心症を誘発させ、心電図で確認する検査方法です。

発作の瞬間に心電図を取らなければ狭心症かどうか判断できない場合に用いられます。

過換気負荷検査

軽い運動により冠攣縮を誘発する運動負荷検査に似て、過換気負荷検査では呼吸に負荷を与えることで冠攣縮を誘発させ検査します。

患者を一時的に過呼吸に似た状態にし、冠動脈の発作を起こしたタイミングで心電図により病状を確認します。

内皮機能負荷検査

血管の内部の状態を確認し、動脈硬化の有無やどの程度の進行度なのかを検査する方法です。

上腕に圧迫を加え、その圧迫から解放したときの動脈の拡張率を測り、血管の異常を調べます。冠攣縮狭心症を含む動脈硬化全般の検査に用いられています。

心筋シンチグラム

放射線を出す物質を静脈から注射し、動脈硬化などの有無を調べる検査です。

注射を用いるものの侵襲性が極めて低いことから一般的に非侵襲的検査に属しています。

 

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