突然死にもつながる冠攣縮性狭心症

日本人に多いとされる冠攣縮性狭心症。心筋梗塞と並び、虚血性心疾患の中では突然死の原因ともなる恐ろしい病気です。日中よりもむしろ夜間や早朝などのリラックスしている時間帯、または就寝中に突如として発作が発症します。
ここでは、冠攣縮性狭心症の症状やメカニズム、発症の危険因子、発作後の診断法や治療法、予後などについて詳しく解説します。一度冠攣縮性狭心症を患った患者は、たとえ治療が終わっても再発による突然死のリスクがあるため、生涯にわたり何らかの対策を継続しなければなりません。

冠攣縮性狭心症とは

冠攣縮性狭心症とは、心臓の冠動脈が痙攣を起こして収縮する病気。収縮した先へは血液が送られにくくなり、最悪の場合、そのまま死に至ります。一般に狭心症は、冠動脈に生じた動脈硬化による血流阻害が原因とされますが、同じ冠動脈における血液阻害でも直接的な原因が異なることから、別々の病気として扱われています。

冠攣縮性狭心症は虚血性心疾患の一種

冠攣縮性狭心症は、虚血性心疾患の一種に分類されます。虚血性心疾患とは、冠動脈の一部で血液が流れにくくなる、または血流が阻害される病気の総称。具体的には狭心症と心筋梗塞の2つに分かれます。

狭心症は、症状の現れ方と原因の違いにより、動脈硬化を原因とした狭心症と、冠動脈の痙攣を原因とした狭心症に分かれますが、両者とも心筋梗塞に発展する恐れがあります。

突然死の原因にもなる

冠攣縮性狭心症が生じた際、重度の不整脈を併発することがありますが、この場合、処置が遅れると突然死にいたることもあります。冠攣縮性狭心症の突然死の率は全体の16%。決して低い数字ではありません。
なお、虚血性心疾患において突然死のリスクがあるのは、基本的に心筋梗塞と冠攣縮性狭心症のみ。心筋梗塞の発作時における30~40%の死亡率よりは低くなるものの、冠攣縮狭心症も同じく突然死を引き起こす心臓疾患であることは覚えておいてください。

疫学的な傾向

動脈硬化による狭心症も含め、狭心症患者全体の40~60%においては、大なり小なり冠攣縮の症状があると言われています。すなわち、狭心症患者全体の40~60%は突然死のリスクと隣り合わせで生きている、ということになります。
また日本人における冠攣縮性狭心症の発症比率は、欧米人におけるそれに比べて非常に高いことで知られています。これには日本人の遺伝的体質が影響しているとも考えられています。

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冠攣縮性狭心症の自覚症状

冠攣縮性狭心症の発作時の自覚症状は、基本的には胸の痛みです。動脈硬化を原因とする一般的な狭心症に比べて、その痛みは強いと言われています。焼けるような痛み、と表現する患者もいます。また胸部痛の他にも、人により様々な自覚症状があることが分かっています。
なお、発作の症状が軽度の場合には、自覚症状がほとんどありません。そのため、見方によっては早期発見が難しい病気であると言うこともできるでしょう。

よく見られる自覚症状のパターン

胸部における激しい痛みの他に、胸が締め付けられるような感覚や、胸を圧迫されたような感覚を覚える患者が多いとされます。また、痛みを感じる部分を厳密に言うと「胸」ではなく、「胸を中心とした広範囲」になることが一般的です。みぞおち、後頭部、肩、首、歯、背中などに痛みが放散する例も見られます。なお動脈硬化を原因とする一般的な狭心症の痛みは5分程度で収まるのに対し、冠攣縮性狭心症は数分~30分程度継続する点は大きな特徴です。
痛みと併せて、吐き気、嘔吐、冷や汗、排便、失神などが見られる場合もあります。

安静時に発作が起こりやすい

一般的な狭心症は、日中、体を動かしているときに発症することが普通です。それに対して冠攣縮性狭心症は、逆に夜間や早朝などの安静時に多く発症する傾向があります。前者を労作時狭心症、後者を安静時狭心症と呼んで区別する場合もあります。

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冠攣縮性狭心症のメカニズム

冠攣縮性狭心症は、心臓の表面を走る冠動脈が攣縮(痙攣を起こして収縮すること)を起こし、一時的に血流が悪化する症状のこと。冠動脈が攣縮を起こすメカニズムには、血管内皮機能の不全、および血管平滑筋の過剰な収縮が関与しています。

血管内皮細胞の機能不全

血管は、外側から順に外膜・中膜・内膜の三層で構成されていますが、これらのうち内膜に存在する細胞組織を血管内皮細胞と言います。動脈は、中膜に一酸化窒素(NO)を吸収することによって拡張するメカニズムがありますが、この一酸化窒素を放出するのが血管内皮細胞。逆に言うと、血管内皮細胞に機能不全があると一酸化窒素の放出が不足し、動脈は収縮してしまいます。

血管平滑筋の過剰収縮

平滑筋とは、血管を始め呼吸器や生殖器、眼球内などに広く存在する不随意筋(意志とは無関係に動く筋肉)。平滑筋の働きは、当該部位における収縮や弛緩の調節ですが、何らかの理由によって冠動脈の血管平滑筋が過剰に収縮した場合、冠攣縮が起こります。

冠攣縮性狭心症の危険因子

冠攣縮性狭心症を誘発する危険因子は、大きく分けて環境要因と遺伝的要因の2つ。遺伝的要因があったとしても、環境要因がなければ発作が起こることは少ないとされます。逆に遺伝的要因を持つ人が、加えて環境要因も持っていた場合、発作のリスクは急激に上がります。発作の予防・改善のためには環境要因を排除することが最も大切、ということです。とりわけ冠攣縮性狭心症に突出した環境要因には、喫煙があります。

環境要因の種類

  • 喫煙

    喫煙が冠攣縮性狭心症の発作の最大の誘因となることは、医学会では定説です。科学的エビデンスも多く存在しています。煙草の煙に含まれる酸化物が体内に活性酸素を大量発生させ、細胞の炎症反応が導かれて冠攣縮が起こる、とされています。現在、すべての医療機関において、患者に対する禁煙指導は必須となっています。

  • 飲酒

    飲酒、特に深酒をした翌朝に発作を起こす人が多く見られます。理由については、いくつかの可能性が指摘されていますが、中でも有力な説がマグネシウム欠乏。マグネシウムが体内で欠乏すると心臓発作を起こすリスクが高いことは以前から知られていますが、アルコールにはマグネシウムを体外に排出する作用があるため発作を誘発しているのではないか、とされています。

  • 脂質異常

    冠攣縮性狭心症患者の血液を検査すると、善玉コレステロールの減少など、脂質に何らかの異常が見られることが多いとされます。脂質の異常を原因とし、体内には発作の遠因となる活性酸素が増大するのではと指摘されています。

  • ストレス

    人はストレスを感じると、交感神経・副交感神経といった自律神経のバランスが乱れてしまいます。乱れた自律神経からの刺激は、冠攣縮性狭心症の発作を誘発すると言われています。

遺伝的要因

冠攣縮性狭心症の体質は、遺伝する可能性があるとされています。遺伝子解析技術の進歩により、現在、発作を誘発するいくつかの遺伝的因子が発見されています。これら遺伝的因子は、欧米人に比べて日本人のほうが多く持っているとされています。

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冠攣縮性狭心症になりやすいタイプの人について

冠攣縮性狭心症の診断方法

一般に心臓病の検査は心電図の動きを確認することで行なわれますが、冠攣縮性狭心症の場合、まさに発作が起こっている瞬間を除き、心電図は正常な波形を描きます。そのため心電図のみによる検査は極めて困難で、他の様々な検査法と組み合わせることで疾病の有無や程度を診断します。
検査法を大きく分けると、侵襲的検査と非侵襲的検査の2種類があります。

侵襲的検査の種類

侵襲的検査とは、体に何らかの危害を加えて検査をする方法。
冠攣縮性狭心症の検査においては、具体的にはカテーテルを使った検査を侵襲的検査と呼んでいます。
太ももや手首からカテーテルを挿入し、そのまま心臓まで到達させて、様々な検査を行ないます。カテーテルの先端から薬剤を放出して造影画像を確認したり、または、カテーテルの先端に設置されたカメラを通じて冠動脈の内部を目視により確認したり、などの検査です。

非侵襲的検査の種類

非侵襲的検査とは、体に直接的な危害を加えずに検査をする方法。その代表が心電図です。ただし、すでに説明した通り、冠攣縮性狭心症の患者の心電図は発作時を除いて正常波形のため、一般的な心電図では検査が困難です。そこで患者には、ホルター心電図と呼ばれる携帯型の心電図を24時間装着してもらい、事後的に発作の状況を確認する方法を採ります。
他にも、医師の目の前で運動などの負荷作業をしてもらい、一時的に発作を創出したうえで心電図を確認する、という方法も行なわれています。

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冠攣縮性狭心症の治療

検査を通じて冠攣縮性狭心症と診断された場合、速やかに治療へと入ります。原則として治療は、手術ではなく投薬によって行われます。あわせて再発を防ぐために、様々な生活習慣の改善指導が行われます。生活習慣の改善については、医師が直接何らかの手助けをできるものではないので、患者本人および家族の努力によって進めていかなければなりません。

薬物療法

冠動脈の痙攣を抑える薬、冠動脈を拡張する薬、全身の末梢血管を拡張する薬などの中から、患者の状態に合わせて最適な薬を処方します。
冠攣縮性狭心症の治療薬として第一選択される薬は、カルシウム拮抗薬です。
他、ニトログリセリンに代表される硝酸薬も多く用いられます。難治性の冠攣縮性狭心症患者に対しては、補助的にニコランジルが投与される場合もあります。

生活習慣の改善

冠攣縮性狭心症は冠動脈の痙攣が直接の原因ですが、患者の多くには、いわゆる生活習慣病の併発が見られます。高血圧、高血糖、脂質異常症(高脂血症)などです。これら生活習慣病を改善するためには、適正な体重を維持することが急務。実際に冠攣縮狭心症を患う患者の多くが肥満、または肥満ぎみと言われているため、食事面や運動面などの生活習慣を是正する必要があります。
他にも、発作を誘発しやすい喫煙、飲酒、ストレスについては医師からの厳重な指導が入ることになります。

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EPAの冠攣縮性狭心症予防効果について

冠攣縮性狭心症の予後

冠攣縮性狭心症は、一般に予後良好な病気とされています。「良好」という言葉は多分に主観的な概念になるので、一部の医師らの個人的印象によっては「良好」ということになるのかも知れません。
主観を排除した医学的な臨床データのみに依拠した場合、冠攣縮性狭心症の再発による死亡率は5~15%とされています。初めての発作における16%という死亡率と合わせると、トータルでの死亡率は決して低い数字ではないと考えるべきでしょう。

激しい運動は再発の要因となる

冠攣縮性狭心症の予後においては、医師から適正な体重の維持を指導されます。肥満は発作の危険因子だからです。食事療法や運動療法を通じ、生涯、適正体重を維持していくことになります。
アメリカのある調査によると、糖尿病の患者さんでは、歩行習慣のある患者は歩行習慣のない患者さんより、死亡率が低いことが報告されています。さらに、一日少なくとも2時間歩く人は、心疾患による死亡率は34%低下。(Edward W. Gregg et al : Relationship of Walking to Mortality Among US Adults with Diabetes, Archives of Internal Medicine, Vol.163, 2003, 1440-1447 より)
ただし運動においては、原則として有酸素運動のみにとどめます。有酸素運動とはウォーキングやサイクリングなど、普段通りの呼吸をしながら行なえる運動のことです。呼吸を乱しながら行なう無酸素運動(短距離走、激しい筋トレなど)は、発作を誘発する危険因子となるので避けましょう。運動に限らず、体を激しく動かすことは禁忌です。

仕事の内容も見直す

比較的激しく体を動かす仕事をしている場合は、医師の診断書をもとに、職場内での異動などを上司に相談してみましょう。また1日4時間以上の残業がある職場や、慢性的なストレスを避けられない職場の場合も、発作の発症率が通常の2倍程度になると言われています。いずれの場合も、職場の責任者との話し合いが必要となるでしょう。
「長時間労働者の健康ガイド」より

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突然死を避けるために

冠攣縮性狭心症の詳細について確認しました。大事なことは、まず発作の誘因を排除すること。特に禁煙、節酒、適正体重の維持は非常に重要なポイントです。冠攣縮性狭心症と診断された方は、必ず生活習慣を見直すようにしてください。また、自己判断による薬物の中止によって患者が死亡した例もあるので、薬の服用についても医師の指導に忠実にしたがってください。

また、まだ病院で診てもらったことはないものの、早朝に胸に異変を感じた経験がある人は冠攣縮狭心症の疑いがあります。明日の朝、突然の発作で亡くなる可能性もあるので、今すぐに循環器科を受診し検査を受けてください。何らかの対策・行動をとらない限り、突然死のリスクは常に隣り合わせにあると考えましょう。

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冠攣縮性狭心症の直接原因:
血管の異常収縮の対策とは?

冠攣縮性狭心症の病因となる血管の異常収縮。胸焼け、安静にしているときにも突然襲ってくる動悸などの症状は、血管が異常に収縮しているサインかもしれません。しばらくしたら落ち着きますが、放置してしまうと血管が完全に詰まってしまい、急性の心筋梗塞も引き起こす恐れもあります。

現在の血管攣縮の治療法は、生活習慣の改善と薬物療法が中心となります。 治療薬に関して、今まで血管拡張作用の硝酸薬や、血管平滑筋細胞内のCa2+流入を抑制するCa拮抗薬などが有効とされてきました。しかし、これらの薬物には耐性やリバウンド効果が問題視されています。さらに、正常な血管収縮も抑制してしまい、血圧が低下するなどのさまざまな副作用もあります。

こうした従来の血管攣縮の治療薬に対し、山口大学の小林誠教授のチームは、血管攣縮のメカニズムを解明し、異常な収縮のみ抑制する成分を抽出できました。その成分の原料は生魚に多く含まれるEPAですが、特殊な方法で抽出することで、EPAの吸収力を高め、血管攣縮の治療に特化した成分へと仕上げました。他の一般的なEPAと区別して「小林式EPA」と命名されました。血管の異常収縮を抑制できる唯一の成分として高く評価されています。

注目の成分「小林式EPA」開発の経緯やメカニズム、また唯一「小林式EPA」が配合されているサプリの説明は以下のサイトで確認してください。

参照元:冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)

 

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