就寝中の動悸は心筋梗塞や狭心症の前兆?

本来、就寝中は全身がリラックスしており、心臓の鼓動もゆっくりになっていくものですが、中には就寝中に動悸を感じて飛び起きたという経験がある人もいるようです。

就寝中の動悸は危険な病気のサインなのでしょうか?

就寝中の動悸は体が発する危険信号?

結論から先に言えば、睡眠中の動悸が必ずしも危険だとは限りません。ただし、中には危険な動悸が存在するのも、決して無視できない事実です。

本来、就寝中や安静時は副交感神経の働きが優位になっており、心臓の鼓動や呼吸数は少なくなります。

しかし、それにも関わらず就寝中に思わず目が覚めるような動悸を感じる場合、そこには何らかの理由があると考えるのが自然です。

そもそも、心臓の鼓動のリズムが変化する不整脈には、脈拍数が減る「徐脈」と、増える「頻脈」があり、場合によってはそこに不規則なリズムをもたらす「期外収縮」が加えられます。

就寝中はリラックス状態にあるので、正常な人でも脈拍が低下して「睡眠時徐脈」の症状が現れることも皆無ではありません。

一方、就寝中に頻脈が起こる場合、そこには洞性頻脈や上室性頻拍、心室頻拍など原因別に幾つかのパターンが想定されます。

前提として、心臓の内部は左右の心房と、左右の心室という、4つの部屋に分けられています。心房と心室の違いは、「血液が返ってくる部屋(心房)」と、「血液を送り出す部屋(心室)」といえるでしょう。

また、心臓の鼓動は心臓の筋肉(心筋)の働きによって生み出されていますが、その心筋を制御しているのは「電気信号」であり、その電気信号の発電所として機能しているのが右心房にある「洞結節」という組織です。

正常時の洞結節は、規則正しく電気信号を心筋へ送り出して、心臓の鼓動を一定に保っています。ですが、時折この洞結節の発電機能や電気信号が流れる経路に不具合が生じて、脈拍が速くなりすぎたり、反対に遅くなってしまったりすることがあります。

これが洞性頻脈や洞性徐脈と呼ばれる症状です。

洞性頻脈は、体調不良や精神的なストレス、アルコールなどの影響で、健康的な人でも起こり得る頻脈です。その為、洞性頻脈が起こっているからといって、絶対に治療が必要とは限りません。

ただし、洞性頻脈の中にも心筋梗塞のような心臓病や心不全が原因になっているものもある為、専門医による心電図検査を受けることが大切です。

次に、洞結節ではない場所から電気信号が発せられ、心筋が鼓動してしまうことがあります。そしてそれは、不規則に生じた電気信号によって脈もランダムになる「期外収縮」、頻繁に電気信号が生まれることで頻脈が起こる「上室性頻拍」や「心室頻拍」、さらに心臓がより一層の混乱状態に陥る「細動(心房・心室)」や「粗動(心房・心室)」に分類されます。

この内、発作性の上室性頻拍は、健常者でも過労や睡眠不足、強い緊張といったものが原因で引き起こされることがあり、心臓病を併発している人でなければ、直ちに命に関わることは少ないでしょう。

対して、心室頻拍や心室細動といった、心室内で電気信号が混乱して生じる、危険度の高い症状もあります。

就寝中の動悸が重篤な心臓病の前兆になる理由

仮に、就寝中の動悸の原因が、洞性頻脈や期外収縮であった場合、不快感や不眠といった症状があったとしても、動悸の程度がそこまでひどくなければ、すぐさま命の危険を感じる必要はないかも知れません。発作性上室性頻拍でも同様です。

しかし、もしも他の不整脈が動悸の原因であったとすれば、話は異なります。

就寝中の動悸が心房細動である場合はどうでしょうか。

心房細動は70歳くらいになると現れやすくなる症状であり、心房の動きが完全に不規則になってしまう不整脈です。心房細動そのもので死に至ることはあまりないといわれていますが、心房細動が起こると血液の流れが悪くなり、血の塊(血栓)ができやすくなるので、やがて脳梗塞などを引き起こすことがあります。

また、心房細動に似ている不整脈が、心房粗動です。心房粗動は、心房の一部が傷つくことにより、電気信号の経路がおかしくなって生じる頻脈ですが、心房細動に比べると鼓動のリズムが規則的という特徴があります。

心房粗動は脈の速さによって、自覚症状がない場合もあれば、動悸やめまいを感じる場合もあるものの、基本的には心房細動と同じく血栓リスクが高まることを忘れてはいけません。

次に、心室内で頻脈が起こる心室頻拍の例を考えます。

血液を送り出すべき心室の動きに異常を来すと、脳や全身へ送られる血液量が減少したり、心臓機能が弱っている人ではそのまま心不全を引き起こしたりするので、心室頻拍は危険性の高い不整脈といえるでしょう。また、心室頻拍が悪化して、心室の動きが完全に狂ってしまう心室細動が起これば、直ちに蘇生措置を行わない限りそのまま死亡するしかありません。

ただし、心室頻拍では脈拍の数や持続時間によっては自覚症状があまりないこともあります。

就寝中の動悸から考えられる他の病気

就寝中の動悸の原因として考えられる病気の代表例が、睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。

SASに何かしらの不整脈が併発する頻度は、最大で50%ほどとされ、SASの重症度に比例して上昇するといわれています。

SASに併発する不整脈は、突然死を招く恐れもあり、睡眠中に大きないびきをかく人や、極端な肥満体型の人などは、気をつけておく必要があるでしょう。

肉体的な病気の他にも、精神的にストレスがたまっている人では、悪夢を見たことが原因で脈が速くなり、動悸として感じられることもあります。

また、ホルモンバランスが崩れていることが原因となって、動悸が起こることもあります。

そのような場合はむしろあまり不安にならず、医師に相談して投薬治療を試してみるといいかも知れません。

心筋梗塞や狭心症の予防法は?

就寝中の不整脈を完全に抑えることは難しいかも知れませんが、起きている間に心筋梗塞や狭心症といった心臓疾患の予防に取り組むことは可能です。

心臓病では不規則な睡眠や、暴飲暴食、喫煙習慣、運動不足といった、生活習慣の乱れが大きな危険因子とされています。

また、生活習慣の改善は、睡眠の質を向上させたり、ホルモンバランスを整えたりする上でも大切です。

日々の生活を見直して、健康的な毎日を送るようにしていきましょう。

心筋梗塞や狭心症の原因は?

心筋梗塞や狭心症の原因として、血管内にコレステロールが付着したり、血管が硬くなったりする動脈硬化や、血管につまって血流を遮断する血栓は、一般にも広く知られています。

しかし、生活習慣や健康状態に関係している動脈硬化や血栓とは異なり、健康な人でも急に狭心症の発作を起こしてしまう病気があります。それが「血管攣縮」です。

血管攣縮は、急に血管がけいれん・収縮して、血流が一気に悪くなる病気で、もしも心臓の冠動脈に血管攣縮が起これば、胸の痛みや苦しさという狭心症の発作が誘発されるかも知れません。

血管攣縮は心臓の健康を考える上で、非常に注目すべきポイントといえるでしょう。