息を吸うと左胸が痛いのは心臓病?

「息を吸うと左胸が痛い」という症状を覚える人もいるようです。痛みを生じる場所が胸ということもあり、心臓病を疑う人もいることでしょう。痛みの原因は様々なものが考えられますが、実際に狭心症や心筋梗塞である可能性が潜んでいることも事実。痛みの特徴をよく確認したうえで、大事に至らないうちに専門病院で原因を特定してもらうようにしましょう。

息を吸うときの胸の痛みは狭心症・心筋梗塞の恐れあり

「息を吸うときに左胸に痛みを感じる」「息を吸わずとも胸に痛みを感じる」、いずれの症状であっても、胸に痛みを覚えた時に真っ先に疑うべきは、狭心症・心筋梗塞です。 後述する通り、他の原因の可能性も十分に考えられますが、狭心症や心筋梗塞は命に関わる症状。その意味においても、まずは最初に疑うべきでしょう。

狭心症・心筋梗塞による胸の痛みの特徴

胸部中央から左側にかけて、締め付けられるような激痛や圧迫感、また、首や肩などに拡大する痛み(放散痛)が生じます。多くの場合は数分程度で症状が落ち着きますが、たとえ痛みが治まってもすぐに病院を受診するようにしてください。症状が長時間解消せず、かつ呼吸困難や失神が見られた場合には命の危険が迫っているため、早急に救急車を要請しましょう。

なお、狭心症・心筋梗塞とは異なる病気ですが、同じく胸に激痛が走る病気として大動脈解離があります。心臓の血管が張り裂けてしまう病気です。大動脈解離の原因の大半は動脈硬化。発症後、胸痛を経て意識障害、失神、腹痛などを生じ、処置が遅れた場合には死に至る恐ろしい病気です。肥満型の人、喫煙習慣のある人、ストレスを蓄積している人は要注意です。

狭心症・心筋梗塞以外の原因による胸の痛み

息を吸うときに左胸が痛くなる症状は、心臓以外に原因を持つものも少なくありません。いずれも心臓病とは異なり、生死に際して一刻を争う病気ではありませんが、放置すると重症化する恐れがあるので治療は必須となります。

■肺の病気

・胸膜炎・膿胸
胸膜に炎症が生じ、胸の中に膿がたまってしまう病気のこと。原因は細菌などの感染症です。呼吸に合わせ、胸に鈍い痛みを伴うことがあります。発熱・悪寒を伴うことも特徴。

・気胸
肺がパンクする病気。痩せ型の若い男性に頻発します。突然の胸の痛みと息苦しさを生じ、呼吸に合わせる形で痛みが変化することが特徴。

■消化器の病気

・逆流性食道炎
いわゆる胸焼けを生じる病気。何らかの理由によって胃液が食道に逆流し、その刺激で食道の内壁に炎症を生じて痛みが走ります。胸痛の一種なので、中には心疾患を心配する人もいるようです。

■神経・筋肉・骨などの病気

・肋骨骨折
過度の運動、激しい咳、外傷などが原因で生じた肋骨骨折が、胸部の痛みの原因となることがあります。体位を変えたとき、深呼吸をしたとき、咳をしたとき、胸を押したときなどに痛みを覚えます。心臓や肺よりも表面で痛みを感じ、かつ骨折の心当たりがある場合も多いことから、その症状を狭心症・心筋梗塞と疑う人は少ないでしょう。

・肋間神経痛・帯状疱疹
帯状疱疹などが原因で肋骨の神経に異常が生じた時、突発的な胸の痛みを自覚する症状。肋骨骨折や側弯症が原因で生じることもあります。

■心因性の病気

各種診療科の検査によって身体的な異常が認められない場合、心因性の胸痛である可能性があるでしょう。精神的なストレスを抱えた時に、動悸・息切れ・胸痛を生じる症状です。

狭心症・心筋梗塞の発作の予防法

狭心症・心筋梗塞の発作が再発した場合には、病院から処方されている硝酸剤などの薬を舌下服用することで、発作は速やかに解消します。ただし薬で発作を抑えるのは、言わば対症療法。根治を目指すためには、生活習慣の改善等が必須となります。

■狭心症・心筋梗塞の発作を予防するための生活習慣

・禁煙する
狭心症・心筋梗塞の発作を抑える予防法として、筆頭に挙げられるのが禁煙です。すでに狭心症・心筋梗塞で通院中の方は、例外なく禁煙指導を受けていることでしょう。一昔前に比べ、昨今は喫煙率がだいぶ低下してきました。まだ喫煙習慣のある方には、一刻も早く禁煙することをおすすめします。自力での禁煙は成功率が低いため、医療機関の禁煙外来を利用するのもおすすめです。

・暴飲暴食を控える
脂質異常症(高脂血症)、メタボリックシンドローム、糖尿病は、狭心症・心筋梗塞の原因。これらの症状の原因の大半は、暴飲暴食です。特に糖質(炭水化物)の過剰摂取には要注意。脂質異常症などを指摘されている人は、ご飯やパン、麺類の摂取を現状の1/3程度まで減らす食生活を心がけてください。なるべく、糖質ではなくタンパク質(肉・魚など)を中心にお腹を満たすようにしましょう。

・軽い運動を習慣化する
暴飲暴食を控えるとともに、軽い運動を習慣化することで脂質異常症、メタボ、糖尿病などのリスクを低下させましょう。筋トレなどの激しい運動(無酸素運動)よりも、むしろウォーキングやサイクリングなどの軽度の運動(有酸素運動)のほうが効果的。毎日多忙で運動をする時間を作ることができない方は、職場や駅で積極的に階段を利用するようにしましょう。

・ストレスをためない
ストレスの多い生活を送っていると、交感神経(自律神経の一種)の働きが活発化します。結果、セロトニンというホルモンの分泌量が増大してコレステロール値が上昇し、血栓生成のリスクを高めます。ストレスを解消することも大事ですが、それ以上に、ストレスを感じない日常を送ることが大事。リラックスして過ごせる時間を、少しでも多く持つようにしたいものです。

・血圧管理をする
先天的・後天的を問わず、高血圧の人は狭心症・心筋梗塞を発症しやすい傾向があります。日ごろから血圧管理を怠らないようにしてください。

血管攣縮を原因とした狭心症・心筋梗塞に要注意

息を吸うと左胸が痛いという症状の原因は、上記の通り実に様々です。かならずしも狭心症・心筋梗塞が原因とは限りませんが、それらが命に関わる病気である以上、左胸が痛む人は警戒が必要です。

狭心症・心筋梗塞の原因は、上述の通り3つ。1つ目が動脈硬化、2つ目が血栓、3つ目が血管攣縮です。 これらのうち、予期が難しく、かつ予防が難しいという意味において、もっとも危険なのが3つ目の血管攣縮。心臓の表面を走る太い冠動脈が痙攣を起こし、急激に収縮して血流を阻害することで発症する症状です。寝ている時や横になっている時など、安静時に多発する傾向があります。

血管攣縮による狭心症・心筋梗塞については、長きにわたり、そのメカニズムが不明でした。しかしながら近年、山口大学の研究グループにより血管攣縮のメカニズム、およびその予防法が解明されたことが、マスコミでも話題となりました。 動脈硬化や血栓を原因とする狭心症・心筋梗塞なら、概ね生活習慣の改善によって予防することが可能です。対して血管攣縮を原因とする狭心症・心筋梗塞は異質のものなので、心臓に何らかの異常を自覚している人は十分な知識を身に付けておいたほうが良いでしょう。