日常生活の注意点

一度心筋梗塞を経験した方の中には、「また発作が起こるのでは?」と恐怖を感じる方も多いのではないでしょうか。毎日おびえて暮らしているとストレスもたまり、回復のためにもよくない影響を与えてしまいます。心筋梗塞の再発を起こさないための対策は、日常生活の中でできるものも多いです。身近なことから取り組んでいってみてはいかがでしょうか。

朝の過ごし方

心筋梗塞の発作は朝に多いとされています。朝の過ごし方ではどのような点に気をつければよいのでしょうか。

ゆっくり起きる

心筋梗塞は、血液がドロドロの状態に血圧の急上昇が重なったときにリスクが高まります。寝ているあいだは水分の摂取ができないため、血がドロドロになりやすい状態です。さらに目覚めから活動開始にかけて血圧が急激に上がっていくため、特に危険な状態といえます。目覚めてから急に活動を開始することは、血圧が急上昇するので避けてください。急がずゆったりと起床し、まずは落ち着いて1杯の水を飲むことを日課にしましょう。

洗顔はぬるま湯で

心筋梗塞や脳卒中などで亡くなってしまうケースは、冬場の寒い時期の朝に集中しています。洗顔やトイレなどの朝起きた直後に行う日常動作は、冷たい水に触れたり衣服を脱いだりするなど、体温の急激な低下を招きやすいためです。血管が収縮して心筋梗塞の発作の原因となってしまいます。寒い冬はもちろん、1年を通してぬるま湯で洗顔を行う習慣をつけておくと安心です。なお、同様の理由で、入浴時の寒い脱衣所も発作を招く危険があります。朝に限らず、体温が低下しやすい寒い場所には十分に注意しましょう。

冬や夏の過ごし方

急激な寒暖差によって心筋梗塞が起こることがあります。冬や夏に気をつけたい場面や対策方法をご紹介しましょう。

寒暖差は体へのストレスになる

心筋梗塞の原因のひとつにストレスがありますが、急激な寒暖差は身体的なストレスになるため、注意が必要です。実際、冬場には心筋梗塞や狭心症の発作が起きやすくなると言われています。暖かい場所から寒い場所に移ると、交感神経が刺激されることで、血管が収縮し血圧が上昇。これにより、心臓に負担がかかり発作につながってしまうのです。そのため、冬場には防寒対策を万全にしておくようにしましょう。冬場に外出するときはコート以外にも帽子やマフラー、手袋を着けるのがおすすめです。

夏場でも注意は必要

寒暖差と聞くと冬場だけ気をつければ良いと思われがちですが、暑い夏でも注意が必要です。暑い外気に触れた後に、冷房の効いた室内や電車などに入ると、温度差により心臓のトラブルが生じることがあります。室内や電車内の温度は自分で調節することができないため、ショールやカーディガンなど羽織るものを持ち歩くようにしてみてください。また、足を温めることで血行が促進され、血圧上昇を防ぐことにつながります。

一日の水分摂取量

心筋梗塞後の生活のなかでは意識的に水分を摂ることが大切です。水分が不足することのリスクや水分補給のタイミングをおさえておきましょう。

水分不足は心筋梗塞のリスク要因

食事や飲み物から適度に水分を摂取しているときは良いのですが、体の水分量が不十分になると脱水状態になります。脱水状態では血液濃度が上がるため、血流が悪くなり、心筋梗塞が発症するリスクが高まってしまうのです。水分が不足すると、まず喉が渇いたり、尿の量が減ったりするため、すぐに脱水状態になることはありません。しかし、心筋梗塞の再発を防ぐためにも意識的に水分を摂るようにしましょう。

こまめな水分補給で2.5リットルを摂取

喉の渇きを感じている状態は、脱水が始まっているサインです。体内の水分の5%を失うと脱水症状や熱中症が起こりやすくなります。血流悪化による心筋梗塞を防ぐためには、喉が渇く前に水分補給をしなければなりません。水分を摂るタイミングとしては、就寝前や起床時、運動中、入浴の前後があります。これらを中心に日常生活のなかで水分を摂る習慣をつけることが大切です。一般的に、一日に必要な水分量は2.5リットルだと言われています。多くの人は水分不足気味とされているため、普段の摂取量に、もうコップ2杯分をプラスするよう心掛けてください。

食事

食事は生活習慣改善の要です。医師による食事指導を受け、ストレスにならない範囲で健全な食生活を目指しましょう。

バランスよい食事を腹八分目で

心筋梗塞や狭心症の発生要因となる高血圧・高脂血症・動脈硬化・肥満体質などは、全てバランスのよい食事によって改善が見込めます。特に、心臓の筋肉を動かすのに必要なカルシウム、心臓の鼓動を司る電気信号を出すためのカリウム、血管の炎症をおさえる食物繊維などは積極的にとっていきたい栄養素です。ただし、食べ過ぎは肥満につながりますので、腹八分目を守って健康的な食事を目指しましょう。

魚は心筋梗塞予防に効果的

魚、特にアジやサバのような青魚に含まれるDHA、EPAという栄養素は血液のネバネバをサラサラに変えるのに大変効果的な成分です。積極的に摂取することで、心筋梗塞が起こりやすい血液環境を解消してくれるでしょう。魚類を毎日たくさん食べるイヌイット民族には、心筋梗塞患者がきわめて少ないことがわかっています。反対に、肉食中心の食事は脂分を多く含み、肥満体質のもととなります。肉食を少しずつ魚食に置き換えていくとよいでしょう。

入浴

入浴は心筋梗塞患者にとって毒にも薬にもなる行為です。何が危険で、何が安全なのかを正しく知って入浴しましょう。

適温は40度

41度以下の湯は、血液中の血栓を溶かしてドロドロの血液をサラサラに変えてくれるので心筋梗塞予防に効果的です。しかし、42度以上になると、今度は反対に血液を固めるはたらきが起こり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まってしまいます。この41度と42度の境目は、ほんの1度で心筋梗塞への効果とリスクが逆転するので注意が必要です。安全のため、40度程度に設定して湯を張ったうえで、水温計を設置して温度を確認しながらお湯に浸かりましょう。

水分補給を忘れずに

入浴すると汗をかき、脱水が起こりやすくなります。脱水は血液の粘度が増し、血管が詰まりやすくなってしまうため、心筋梗塞のリスクを抱えた方にとって大敵の症状です。水分不足に陥らないよう、入浴前に1杯、入浴後に1杯の水を飲むことを習慣づけることをおすすめします。また、湯上がりにアルコールを摂取する習慣のある方も、まずは水を飲み、アルコールは身体の熱がしっかり冷めてから飲むように心がけたほうがよいでしょう。

睡眠

心筋梗塞と睡眠は直接関わりがないように思えますが、実はそうではありません。心筋梗塞再発防止のためにどのようなことに心がけたらよいのでしょうか?

睡眠時間はほどほどが一番

睡眠と心筋梗塞の発症リスクの関係については長年研究が続けられています。長期間にわたる睡眠不足は血圧を上昇させ、身体に疲労も蓄積していくため、心筋梗塞にはよくないコンディションです。しかし、反対に1日9時間以上の睡眠をとっている人も、心筋梗塞などの心疾患で亡くなる確率が高いと研究からわかっています。心筋梗塞の発症リスクがもっとも低いのは、7時間程度のほどほどの睡眠です。

睡眠の質にも気を配って

たとえ7時間布団に入っていても、なかなか寝付けなかったり、寝ても眠りが浅く何度も目覚めてしまったりするという方も多いことでしょう。睡眠は時間だけでなく質も大切です。何か心配事を抱えているとか、心筋梗塞再発への不安感などの理由から眠れないといった場合、寝ているつもりでも身体はなかなか回復できていません。眠りの質が悪いと感じたら、眠りが浅くなる要因に立ち返って考えてみてください。

家事

家事は日常生活の基本。毎日行うことだからこそ、心筋梗塞のリスクには気をつけたいものです。

家事の危険な動作

家事の中には危険な動作がいくつかあります。1つは、洗濯や買い物などで重たいものを急に持ち上げる動作。もう1つは、しゃがんだり、頭を下に向けたりして血圧が急に変調をきたすような動作です。床掃除や園芸の際にこのような姿勢になりやすいので気をつけてください。ふらつきや動悸を感じるようであれば、しばらくは他のご家族にその家事を頼むかサポートをしてもらえる体制を整えておくと安心です。また、体力不足が影響して家事が行いづらくなっているケースもあります。その場合は、日頃からウォーキングなどの軽い運動を心がけることで改善されていくでしょう。

症状が出たら無理しない

家事は歩きまわったり重い物を持ち上げたりと、意外と体力を使うものです。全く健康な人なら問題ないような動作でも、心筋梗塞で心臓機能の低下した方では、少し心拍数が上昇し息が上がったときに動悸がしたり、胸が苦しくなったりすることがあります。このような症状が出たときには、無理せずすぐに家事を中断して休息をとり、場合によっては医師の判断をあおぎましょう。安全な症状・危険な症状は患者さんの状態によってそれぞれですから、医師にどういった自覚症状が出たら危険なサインなのかをよく聞いて知っておくことが大切です。

お酒とタバコ

お酒やタバコは、一部の方にとっては生活の質を左右する重要な問題でしょう。心筋梗塞後、お酒やタバコとどのように付き合っていくべきでしょうか。

お酒はほどほどに

「心筋梗塞を起こしたら断酒しなくてはならないの?」と心配する患者さんは多くおられます。しかし、実はお酒を全く飲んではいけないということはありません。むしろ、毎日適量の飲酒をする習慣のある人は、心筋梗塞・脳出血・がんなどさまざまな病において全くお酒を飲まない人よりも発症率が低いという研究結果もあります。ただし、大切なのはあくまで「適量」を守ること。男性の場合は1日にビール大瓶1本、または日本酒1合、またはワイン2杯が適量とされています。女性はその半分を目安としましょう。

タバコは禁煙を目指しましょう

タバコと心疾患との相性はきわめて悪く、心筋梗塞の再発防止を目指すなら禁煙を目指すのが絶対条件です。喫煙者の心筋梗塞の発症率は非喫煙者の3倍とするデータもあります。タバコを吸うと血圧が上昇し、脈拍が増え、さらに動脈硬化が促進されるためです。また、心筋梗塞の後遺症として不整脈を患っている場合は、不整脈が誘発されたり、抗不整脈薬の効き目が変化したりといった悪影響も及ぼします。どうしても禁煙が困難な場合は、医師に相談して、ニコチンガムなどの禁煙補助剤を用いる方法も検討してみてください。禁煙外来に通うのも有効な手段です。

趣味

心筋梗塞を経験した後も、長年行っている趣味をまた再開したいと考えるのは当然のこと。リスクに気をつけながら無理のない範囲で趣味を楽しみましょう。

スポーツ

運動はさまざまな成人病のリスクを低減させてくれるのでぜひ取り入れたいものですが、一部のスポーツには心筋梗塞と相性の悪いものもあるため注意が必要です。心筋梗塞発作リスクの高い早朝から活動することが多く、また瞬間的に力を込める運動の多いゴルフや、筋肉トレーニングやウェイトリフティングのような無酸素運動系のスポーツ、心拍数が高い状態がキープされるマラソンなどは要注意です。これらの趣味を再開する場合は、必ず医師に相談のうえ、体調に気をつけながら少しずつ再開するようにしましょう。

ツーリング

心筋梗塞を起こした方にとって、緊張やストレスにさらされる状況はあまりよくありません。長時間の運転で常に緊張を強いられるバイクのツーリングなどは、細心の注意を払って行う必要があります。趣味を再開する際は医師に相談し、体調がしっかり回復していることを確認してからにしましょう。特に高速道路を運転するときは、知らず知らずのうちに一般道よりも高い緊張状態となります。こまめな休憩や水分補給を適宜行えるよう、旅行計画は余裕を持って設定すべきです。

ギャンブル

意外にも心筋梗塞との関わりが無視できないギャンブル。どういう点が心筋梗塞のリスクを高めるのでしょうか。

興奮・緊張状態は悪影響

ギャンブルは興奮や緊張、不安や高揚などといった心理作用をもたらすレジャーです。心筋梗塞を一度発症したことのある人は新機能が低下している場合が多いため、普通の健康な人なら問題なく耐えられるような興奮でも、命に関わるような重大な体調不良につながるケースがあります。ギャンブルによって異常な興奮を得たり、大声を出して声援を送ったり、負けてイライラしたりすることは、心機能に不安のある方には好ましくない趣味といえるでしょう。

受動喫煙のリスクも心配

心筋梗塞の再発リスクにはタバコの害が無視できません。一部のギャンブルの遊技場などは禁煙制となっていない場所も多く、受動喫煙で煙を吸い込んでしまうことも多いでしょう。また、せっかく禁煙していても、ギャンブルで負けてイライラしてついついタバコに手を出してしまうといったこともあるかもしれません。そういったリスクに近寄らないという意味でも、心筋梗塞からの復帰を機にギャンブルをやめるというのも一つの手です。

性行為

心筋梗塞後に性行為を行っても良いか気になっている人もいるでしょう。性行為を我慢したほうが良い期間や心筋梗塞の再発リスクについて紹介します。

性行為をコントロールする期間

心筋梗塞の治療後にはある程度の期間、性行為をコントロールすべきと言われています。再灌流療法を行う前では、心筋梗塞発症から6~8週間は性行為を避けたほうが良いでしょう。しかし、アメリカ心臓病学会が発表したガイドラインでは、症状が安定していれば心筋梗塞から1週間が経過していれば性行為が許可されています。これは、性行為はウォーキングや階段の上り下り程度の運動強度であり、心疾患が安定した状態であれば安全に行えるためです。

心筋梗塞発症のリスク

性行為による心筋梗塞のリスクは低いと言われています。しかしある程度は心臓に負担がかかるため、心筋梗塞発症のリスクは平常時と比べて高くなるでしょう。また、日常生活のなかで座っていることが多い方では、性行為中の発症リスクが高くなるため注意が必要です。急性心筋梗塞のうち性行為が原因だったものは1%と少ないものですが、これは性行為に割く時間が短いため。また、身体的付加だけでなく、精神的興奮も心血管系への負担になると考えられています。

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