退院後の仕事

心筋梗塞を経験された方でも、医師の指導のもとリハビリや体調管理を行い職場に復帰されるケースはたくさんあります。しかし、くれぐれも無理は禁物です。後遺症や再発に注意しながら、負担のない範囲で社会復帰を目指しましょう。

このページでは、心筋梗塞からの復帰後に気をつけたほうが良い仕事や、心筋梗塞の原因となる血管攣縮と、その予防法に関して紹介します。

控えたほうがいい仕事

心筋梗塞からの回復後は、常に心臓の調子に気を配りつつ仕事に復帰することが肝心です。デスクワークの事務職であればほとんど支障はありませんが、なかには控えておくべき仕事もあります。医師や上司、職場と相談しながら無理のない範囲で仕事に復帰しましょう。

血圧が上がる「力仕事」は高リスク

基本的に、心筋梗塞の回復後は心臓に負担のかかる行動は危険ですので、肉体労働は全般的に要注意です。特に、重い物を持ち上げる運送業や農業、大きな力を込めて作業する漁業、土建業など、力を入れて瞬間的にふんばる必要がある仕事は可能な限り避けたほうが良いでしょう

肉体労働に復職する場合は、医師に仕事内容を説明したうえで、作業スピードをゆるめてゆっくり仕事をする、座ってできる作業は座って行う、休憩時間を多めに設けるなどの特別な対応をしてもらえるよう職場にかけあってみることが必要となってくるでしょう。

ストレスがかかる仕事は要注意

心筋梗塞の再発防止のためにはストレスは大敵です。意外かもしれませんが、長時間同じ姿勢で集中し続けることを必要とされる運転業、客先を訪問するなど緊張を強いられる営業職やサービス業なども心臓に対しては注意が必要な職業です

患者さん一人ひとりの症状によって、どの程度の仕事までなら安全に復帰できるかは異なりますので、まずは医師と相談してください。場合によっては、運転業の場合は短距離運転の職務や事務職に配置転換してもらう、営業職やサービス業の場合は内勤の事務職に配置転換してもらうなどの対策をとる必要があります。

参照元:心筋梗塞 と職業の関係-日本病理剖検輯報を用いた統計的研究-
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat1973/12/5/12_5_1315/_pdf

心筋梗塞の再発予防に血管攣縮は要注意

心筋梗塞は、たとえ治療したとしても再発のリスクがある病気です。心筋梗塞の発症の主な原因は、血管攣縮(れんしゅく)という症状。再発を防ぐためには、この血管攣縮を予防することが先決とされています。以下、血管攣縮について詳しく見ていきましょう。

血管攣縮とは

私たちは、血流なしには生命を維持することはできません。微細な血管の血流停止なら大きな問題になることはありませんが、大きな血管の血流が停止すると、重篤な症状へとつながることがあります。

血流停止、または血流が悪化する原因にはいくつかの種類がありますが、それらの中に血管攣縮(れんしゅく)という症状があります。血管攣縮とは、何らかの理由によって血管が痙攣を起こし、やがて血管が異常に収縮していく症状のことです。ホースを強くつまめば水流が一時的に遮断されますが、同じ状況が血管で起こった場合、これを血管攣縮と言います。

血管攣縮は、体の血管のいたるところで発症しうる症状なのですが、特に深刻な場所は冠動脈。冠動脈とは心臓に血液を供給する巨大な血管のこと。この血管が攣縮して血流が途絶えると、最悪の場合、いわゆる心筋梗塞を発症することになります。

参照元:冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_ogawah_h.pdf

心筋梗塞の既往歴がある人には血管攣縮が起こりやすい

血管攣縮は、コレステロール値の高い人、動脈硬化を患う人、過去に心筋梗塞を起こした人などに起こりやすいことが分かっています。これら高コレステロール、動脈硬化、心筋梗塞は、一見バラバラの症状に見えるものの、実は密接につながっているもの。コレステロールの高い人は動脈硬化につながるリスクがあり、動脈硬化を持つ人は心筋梗塞になるリスクがあるからです。これら一連のつながりの中に血管攣縮が関わっている、ということになります。

もともと心筋梗塞を起こした人の多くは、動脈硬化が進行しています。そのため、たとえ治療によって心筋梗塞の症状が治まったとしても、この一連のつながりを断ち切らない限り、ふたたび血管攣縮から心筋梗塞を再発させる可能性は十分にあると考えましょう。

心筋梗塞の原因となる血管攣縮の予防方法とは?

長らく原因やメカニズムが特定できなかった血管攣縮について、近年、山口大学の小林誠教授の研究チームが、医学会を揺るがすような大きな発見をしました。

細胞膜から作られる「SPC」と呼ばれる成分が、血管攣縮の症状を悪化させることを突き止めたのです

このメカニズムを元に、小林教授のチームは血管攣縮を予防する成分の研究に着手。その結果、イワシなどの青魚に含まれる「EPA」に血管攣縮を予防する効果があることを解明しました。

ただし、血管攣縮の予防に効果を及ぼすには、EPAの立体構造(シス体)を壊さない状態で成分を抽出する必要があります。小林教授は、この構造を壊さないようEPAを抽出することに成功。このEPAは、一般的なEPAと区別して「小林式EPA」と呼ばれ、医学会では血管攣縮を予防する有効な成分として大きく注目されています。

注目の成分「小林式EPA」開発の経緯やメカニズム、また、唯一「小林式EPA」が配合されている商品の説明は以下のサイトで確認してください。

参照元:「血管異常収縮の分子機構と分子標的治療薬の探索」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/133/3/133_3_124/_pdf

ストレス対策のためにできること

心筋梗塞の再発を起こさないためには、できるだけストレスの少ない生活を送るのが一番。しかし、職場に復帰するとなればストレスは避けては通れない問題です。なるべくストレスを感じずに済むための対策をご紹介します。

自分自身の罪悪感や焦燥感がストレスに

心筋梗塞を経験後に職場復帰された方は、しばしば発病前と復帰後での仕事の能力のギャップについて悩まれるようです。「同僚に迷惑がかかる」といった罪悪感、「以前と同じ仕事量がこなせない」といった焦燥感は大きなストレスとなり、身体のためには良くありません

患者さん本人は周囲の目を気にして悩まれるようですが、多くの場合、本人が思うよりも周囲の人は暖かく見守ってくれているのが普通です。できれば気持ちを切り替えて、「今は体調第一で、回復に専念する時」と考えるようにしてください。回復の経過しだいでは、発病前と同じ仕事量にまで仕事を増やすことも不可能ではありません。

「仕事第一」の考え方を改め、肩の力を抜く

心筋梗塞の患者さんには、几帳面で仕事第一の考え方をしており、発病前は長時間残業や休日出勤をしてまで自分の仕事をトコトンやり遂げるというタイプの方が少なくありません。健康体であればそうした働き方も良いのですが、心筋梗塞からの回復後には望ましくない働き方です

できればこれからは、仕事第一ではなく趣味や息抜きに精を出して、体に負担のない範囲で仕事を進める生き方に転換することをおすすめします。仕事を早めに切り上げて帰り道に軽いウォーキングを楽しむ、有給休暇はきちんと消化して身体を休めるなどして、上手に気分転換を図りましょう。

通勤時の注意点

急ぎ足で歩いたり、満員電車に揺られたりと、通勤は思った以上に身体に負担がかかります。心筋梗塞で数週間から数ヶ休職した方が久しぶりに通勤するのは、なおさら苦労の大きいものです。通勤の際に気をつけたいポイントをご紹介します。

出発時間には余裕を持って

ぎりぎりの時間帯での通勤は、電車の時間を気にして小走りになったり、ラッシュ時の満員電車で大きなストレスを感じたりと、心筋梗塞を経験して復職される方には危険なシーンがいくつかあります。特に通勤電車のラッシュは健康な人でも辛く感じるものですから、できれば避けたほうが無難です

慣れるまでは、朝は十分な余裕をもってゆったりと通勤することをおすすめします。時間に追われて焦ることもなく、通勤ラッシュも避けることが可能です。場合によっては、電車でも座席に座れますので、安心して会社に向かうことができます。

安心のために事前確認を

心筋梗塞を経験された方は、「今、発作が起こったらどうしよう」と不安に思われるものです。ときには、その不安自体がストレスとなり、体調のためには良くないこともあります

転ばぬ先の杖として、普段よく使う駅などのAEDの位置を確認しておくと良いでしょう。「万が一の時があっても大丈夫」という安心感にもつながります。また、電車に乗る場合は優先座席の位置をあらかじめ確認しておきましょう。電車内で気分が悪くなった時でもすぐ休むことができ安心です。

 

心筋梗塞・狭心症を予防
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