心筋梗塞後の運転

心筋梗塞から回復した患者さんは、日常生活を徐々に取り戻していきます。運転もそのひとつ。住んでいる地域によっては、「運転しなくては生活できない」といった方も少なくないはずです。心筋梗塞後に運転をする場合、どういった点に気をつけたら良いのか見ていきましょう。

運転できるのはいつから?

心筋梗塞から復帰した後は、早く元の生活に戻ろうとしてみなさん焦りを感じるものです。しかし、自分の身体を過信するのは禁物。心筋梗塞を発病してから安全に運転するには、どのくらいの時間が必要なのでしょうか。

カテーテル手術の場合は退院後1ヶ月が目安

心筋梗塞によってカテーテル手術を行った場合は、退院後1ヶ月程度は運転を控えたいところです。身体が元通り動くように思えても、運転は知らず知らずのうちに緊張させ、心身にストレスや疲れを与えるためです。医師から許可をもらえても、無理をせず短距離での運転練習を繰り返し、勘を取り戻してください。

バイパス手術の場合は余裕を持って3ヶ月

バイパス手術を行った場合は、身体へのダメージが心配されますので3ヶ月程度は我慢が必要です。これは急ブレーキや事故が起こった際にエアバッグなどで衝撃を受けると、術後の患部に深刻な影響を与えかねないためです。運転の再開はくれぐれも医師の指示を仰いでからにして、再開時は久しぶりの運転で事故を起こさないように注意してください。

再発の可能性を高める要因

運転は実は心筋梗塞の発作を起こしやすい行動です。運転を再開したいならば、発作の再発の可能性をきちんと理解しておき、発作の可能性を高める要因を取り除いて安全に運転できるよう心がけるようにしましょう。

運転中のストレスや緊張

どんなに運転に慣れた人でも、運転中はささいなことでストレスを感じたり緊張したりし、知らず知らずのうちに血圧が高くなっているものです。血圧が高い状態が続くと血管も詰まりやすくなり、自然と発作を起こしやすくなります

運転中の心筋梗塞を避けるには、運転はストレスや緊張を感じるものということを十分に自覚し、こまめな休憩や気分転換を設けるのが一番です。

長時間運転は避けよう

運転が長時間に及ぶと、同じ姿勢でいることで血流が滞ったり、疲れが蓄積したりして心筋梗塞の起きやすい状況に陥ります。また、ついつい水分補給を忘れてしまい、血液がドロドロの状態になってしまうこともあるため、注意が必要です

主治医に運転を許可されても、何時間でも運転して良いということではありません。自分の病状では何分程度の運転なら許容範囲かを一度きちんと聞いておくことをおすすめします。

運転中の再発を防ぐために

職業ドライバーの死亡事故の4割以上が、脳卒中や心筋梗塞の発作を原因とする事故だといわれています。運転は危険と隣り合わせということをしっかりと自覚しながら、発作の再発防止のためにできることを一つひとつ行っていきましょう。

無理は禁物。ドライバーは交代制で

遠方までドライブしなければならない場合、どうしても運転は長時間に及びます。疲れがたまり長時間緊張した状態を強いられるのは避けたいところです。可能な限り、運転を交代してもらえる方と同行するようにしましょう。また、疲れてから交代するのではなく、疲れを感じる前に交代するのがおすすめです。

休憩を徹底して安全なドライブを

健康な方でも運転は疲れるものですから、心筋梗塞から復帰後の方ではなおさらです。万全の状態で運転するために、前日に睡眠を十分に取り、当日もきちんと休憩をはさみながら、なるべくストレスを感じない状態で運転していくことが大切です。

法律的には大丈夫?

心筋梗塞後に運転を行ってはならない、という法律はありません。ただし、運転中の緊張やストレスが原因となり、運転中に心筋梗塞が再発してしまうリスクはあります。加えて、心筋梗塞の後遺症として不整脈が残った方の場合、不整脈が原因となり運転中に失神してしまうリスクもあります。

早期治療が奏功し、まったくの健康な状態に戻ったのであれば運転しても概ね問題はありませんが、特に失神を繰り返すような後遺症が残った場合には、主治医とよく相談のうえ運転の可否を検討する必要があるでしょう。

■平成26年6月1日から施行されている改正道路交通法について

平成26年6月1日より、一定の病気を患う方に対し、免許更新の際に公安委員会が病気の症状に関する必要な質問ができるようになりました。質問内容について、岡山県警の公式HPから引用します。

【質問内容】

※ 回答方法は、以下の質問内容に当てはまるかどうかによって、「はい」か「いいえ」を選択する方法です。

1.過去5年以内において、病気(病気の治療に伴う症状を含みます。)を原因として、又は原因は明らかでないが、意識を失ったことがある。

2.過去5年以内において、病気を原因として、身体の全部又は一部が、一時的に思い通りに動かせなくなったことがある。

3.過去5年以内において、十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、日中、活動している最中に眠り込んでしまった回数が週3回以上ある。

4.過去1年以内において、次のいずれかに該当したことがある。

  • 飲酒を繰り返し、絶えず体にアルコールが入っている状態を3日以上続けたことが3回以上ある。
  • 病気の治療のため、医師から飲酒をやめるよう助言を受けているにもかかわらず、飲酒したことが3回以上ある。

5.病気を理由として、医師から、運転免許の取得又は運転を控えるよう助言を受けている。

※ 各質問に対して「はい」と報告しても、直ちに運転免許を拒否若しくは保留され、又はすでに受けている運転免許を取り消され若しくは停止されることはありません。
(運転免許の可否は、医師の診断等を参考に判断されますので、正確に報告してください。)

上記で注意したい「質問内容」は、1および2です。心筋梗塞の発作を発症した際、意識を失った方もいることでしょう(1)。あるいは、失神や胸痛などの影響により、一時的に身体を思い通りに動かすことができなくなった方もいることでしょう(2)。

よって、心筋梗塞や狭心症を原因として1または2に該当した方は、質問に対して「はい」と応えなければ虚偽記載となります。虚偽記載の罰則は「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。

事故を起こしていないにも関わらず、虚偽記載をした時点で刑事罰が課される点、心筋梗塞や狭心症で1や2に該当する方は十分に理解してください。

■安全な運転に支障を及ぼす恐れのある「一定の病気」

改正道路交通法では、安全な運転に支障を及ぼす恐れのある「一定の病気」について、以下のように規定しています。

【一定の病気等の例】

  • 認知症
  • 統合失調症
  • てんかん
  • 再発性の失神
  • 無自覚性の低血糖症
  • そううつ病
  • 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
  • アルコール、麻薬等の中毒
  • その他安全な運転に支障のあるもの

上記に、アルコール、麻薬等の中毒を加えて「一定の病気」と定義しています。

これらのうち心筋梗塞は、後遺症の程度に応じて「再発性の失神」に含まれる可能性があるでしょう(含まれるかどうかは個々の事情により異なります)。

なお、「一定の病気」に該当する患者の情報について、主治医は任意で診断結果を公安委員会に提出することができます。

事故を起こした場合には危険運転致死傷罪に問われる可能性も

上記の「一定の病気」により運転することが危険であることを自覚しながら運転し、かつ事故を起こして他人を死傷させた場合、危険運転致死傷罪に問われることがあります。

以下、法務省が公表している「(継続案件)自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案」を参照にまとめました。

 

■危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪

危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪の関係について、法務省では次のような見解を示しています。

自動車の運転による死傷事件の件数は減少傾向にありますが、飲酒運転や無免許運転のような悪質で危険な運転によって、亡くなられたり怪我をされたりする事件は、後を絶ちません。

このような事件の中には、危険運転致死傷罪の要件に当てはまらないため、自動車運転過失致死傷罪が適用された(注)ものもあり、悪質で危険な運転が原因なのに、過失犯、つまり不注意によって起きた事件として自動車運転過失致死傷罪として軽く処罰されるというのはおかしいのではないか、といった御意見が見られるようになりました。

そこで、この法律は、自動車の運転による死傷事件に対して、運転の悪質性や危険性などの実態に応じた処罰ができるように、罰則の整備を行うものです。

(注)危険運転致死傷罪が適用されると、死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役刑、負傷させた場合は15年以下の懲役刑となりますが、自動車運転過失致死傷罪(この法律の過失運転致死傷罪)が適用されると、7年以下の懲役刑・禁錮刑か100万円以下の罰金刑となります。

引用:法務省「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律に関するQ&A」

危険運転致死傷罪の適用例の一つとして、同省では「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気 (第3条第2項)」を挙げています。この中で列挙されている病気の中に、上記、警察と同じく「再発性の失神」が含まれています。

繰り返しますが、運転中の心筋梗塞の再発が原因で他人を死傷させた場合、かならずしも危険運転致死傷罪に問われるというわけではありません。適用される法律は個々の事案に基づいて個別で検討されます。

ただし、裁判所が「悪質」と認めた場合には危険運転致死傷罪に問われる可能性がある、ということを理解しておいてください。

急性心筋梗塞患者の退院後
早期運転の安全性を検証する実験

心筋梗塞後の運転の安全性を検証するために、急性心筋梗塞患者8名(男性7名、女性1名)を被験者としての実験が行われました。

実験では、急性心筋梗塞患者が退院後の早期、自動車運転をしても心拍数、血圧に問題がないか心電図モニターで患者の緊張度合を測定。自動車運転の時期は退院2週目以降に行う。患者は十分に身体を休息させ、服薬してから2時間以上経過した状態で、1週間以内に2回、自宅から病院まで走行する。運動療法中のデータと比較して数値に問題がないか診断。病院に到着してから10分後、聴診法により血圧測定する。

結果として、初回の運転時には精神的緊張による心負荷の上昇傾向があるということがわかりました。退院してから早期に患者が自動車運転することは可能ですが、初回運転時の際、精神的緊張による心負荷が上昇する点に注意が必要。 ただし、心負荷の数値は運動療法とほぼ同じであり、2回目には下がっていることから、通院に自動車を使用することは問題ないと思われます。 今回はその安全性が立証されましたが、あくまでも自宅から病院までの距離であり、30分以内の走行についてです。長時間運転することは身体的にも血流不足や疲労が起こりやすくなり、体調が急変することも考えられます。くれぐれも運転は短時間にとどめ、できるだけ一人で車に乗らないようにすることが、突発的な事故を回避することにつながります。

参照:「急性心筋梗塞患者の退院早期の自動車運転時心血管反応」聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/1996.23.2/0/1996.23.2_356/_pdf/-char/ja

心筋梗塞の再発リスクを高める血管攣縮
について知りましょう

心筋梗塞にいたる主要な原因に、血管攣縮(れんしゅく)という症状があります。血管攣縮とは、血管が突如として収縮し、血流を阻害してしまう症状のこと。血管攣縮は、最悪の場合、狭心症や心筋梗塞を招くリスクのある恐ろしい症状。心筋梗塞の再発予防のためには、血管攣縮の発症を抑える必要があります。

血管攣縮とは

血管攣縮とは、何らかの理由で血管の一部が痙攣を起こし、その部分の血管が縮んで血流の流れが悪くなる症状のこと。血管攣縮は、体中のあらゆる血管で生じる可能性のある症状なのですが、特に心臓の冠動脈で生じた場合は、狭心症や心筋梗塞などの深刻な事態にいたることがあります。

心筋梗塞の既往歴があると血管攣縮を起こしやすい

血管攣縮は健常な人にでも突然発症することのある恐ろしい症状。ただ、一般には高コレステロールの人、動脈硬化を患う人、過去に心筋梗塞を起こしたことのある人などに起こりやすいと言われています。

コレステロール値の高い人は、やがて動脈硬化に発展する場合があります。また、動脈硬化は心筋梗塞の主要な原因の一つでもあります。血管攣縮は、これら一連の流れのどこかで発症する傾向があるのです。

過去に心筋梗塞を起こしたことのある人は、現在も動脈硬化を持っている可能性があります。血管攣縮から心筋梗塞の再発を招く恐れがあるため、たとえ現在は治療によって心筋梗塞が改善していたとしても、油断をしないようにしましょう。

血管攣縮の予防・改善に効果的な成分「小林式EPA」とは

血管攣縮の直接的な原因物質は、SPCと呼ばれる脂質の一種。このSPCが生み出す酵素の働きによって血管攣縮が発症します。 近年、山口大学の小林誠教授率いる研究グループは、この血管攣縮のメカニズムを阻害する画期的な成分を世界で初めて発見。血管攣縮を始め、狭心症や心筋梗塞の治療に大きな可能性を与えました。

小林教授らが発見した成分はEPA。青魚に含まれている有名な脂質成分ですが、教授らは、このEPAを特殊な方法で抽出することによって、血管攣縮の発症を著しく抑制することに成功しました。サプリメントなどで市販されている一般的なEPAには同様の作用がないことから、両者を区別する意味で、教授らが抽出したEPAを「小林式EPA」と呼ぶことがあります。

なお、従来からある血管攣縮の治療においては、攣縮を起こした血管のみならず、全身の血管も同時に拡張させるというやり方が一般的でした。そのため、血管拡張からくる血圧低下など、いくつかの副作用も指摘されていました。一方で「小林式EPA」は、攣縮を起こした血管部位のみ拡張させる方法。副作用の少ない方法として、世界中の医学会から注目されています。

注目の成分「小林式EPA」開発の経緯やメカニズム、また、唯一「小林式EPA」が配合されている商品の説明は以下のサイトで確認してください。

 

心筋梗塞・狭心症を予防
するためには?