薬物療法

心筋梗塞と狭心症では治療内容が異なるため、治療薬もそれぞれ違います。心筋梗塞の治療では、薬で血栓を溶かして血液の流れをよくします。主に抗凝固薬・抗血小板薬・血栓溶解薬・脂質異常症治療薬を使います。狭心症の治療の目的は「発作を鎮める」「発作を起こさない」の2つ。主に硝酸薬・カルシウム拮抗薬・β遮断薬を使用します。

【心筋梗塞・狭心症】再発予防の実践と注意点 >>

心筋梗塞の薬の目的は
血栓の予防と血流の改善

心筋梗塞は冠動脈内にプラークが溜まり、血流が止まって、心筋が壊死する病気です。治療の目的は血栓ができるのを防いで、血流をよくすること。現在、使われている薬は、①血管を拡張する薬(硝酸薬・Ca(カルシウム)拮抗薬・ニコランジル)、②血栓を溶かす薬(抗血小板剤・ヘパリン・ワルファリン血栓溶解剤・脂質異常症治療薬)、心臓の働きを強くする(β遮断薬)、④冠動脈の動脈硬化を抑制・予防する薬(スタイン)です。

狭心症の薬の目的は
心臓の負担を軽減すること

狭心症の治療の目的は、心臓の負担を減らすことです。冠動脈を拡げて血圧を下げて心拍数を減らすことで軽減させます。治療で使われる薬は、①血管を拡張する薬(硝酸薬・Ca(カルシウム)拮抗薬・ニコランジル)、②血栓を溶かす薬(アスピリン・脂質異常症治療薬)などが主なもの。これらの中で、発作を起こした後の、標準予防薬になっている薬が、抗血小板薬のアスピリンです。副作用の心配がなく、安全でリーズナブルな薬として、世界中で服用されています。

 

抗血小板薬

【抗血小板薬】動脈の血栓を予防して心筋梗塞を防ぐ

抗血小板薬は、血小板の凝固を阻害して血栓を防ぐ薬で、アスピリンやクロピドグレル、シロスタゾールなどがあります。動脈にできる血栓を予防し、心筋梗塞・狭心症・脳血栓などの予防として処方されることが多い薬です。ただし、すでにできてしまった血栓に対しては効果がありません。また血液を固まりにくくする作用があるため、血管が傷つくと出血しやすくなります。服用中に大きな手術などを行う場合は、命に係わる恐れもあるため、一時服用を中断することがあります。

心筋梗塞を予防する副作用の心配がない「アスピリン」

抗血小板薬の中でも、多く処方されるのが、アスピリンです。世界各国で大規模な疫学調査を行ったところ、毎日100㎎程度の服用で心筋梗塞の発症率や死亡率が激減したことが認められました。100年以上前から使われている薬なので、副作用の心配がほとんどありません。価格的にもリーズナブルなので、安心して服用できます。鎮痛目的で処方されるアスピリンとは、成分や量が異なるので、必ず医師の処方を受けください。

 

Ca(カルシウム)拮抗薬

【Ca(カルシウム)拮抗薬】血管を拡張して血圧を下げ、痙攣を抑える

Ca(カルシウム)拮抗薬は血管を拡げて血圧を下げる薬です。主にノルバスク錠やコニール錠、ヘルベッサーRなどの薬があります。カルシウムは、骨や歯などに含まれる主要な成分で、心筋や冠動脈などにも存在し、筋肉を収縮させる作用があります。カルシウムの働きを抑えることで、心筋の緊張を取り除き、冠動脈を拡げる作用があります。心筋梗塞・狭心症ともに処方されます。また狭心症の予防や予後、降圧剤としても用いられます。血管が痙攣するタイプの狭心症にも処方されます。

途中で服用を中止すると症状が悪化することも

Ca(カルシウム)拮抗薬は非常に種類が多く、心筋梗塞・狭心症に効果があるものから、不整脈に効くもの、血圧を下げる働きがあるものなど、様々です。その中で、心筋梗塞・狭心症に処方されるのは、アムロジン、バイミカード、ヘルベッサーR等。顔のほてりや倦怠感、めまい、息切れ、気管支痙攣などの副作用が起きる場合もあり、気管支喘息のある人は要注意です。また服用を途中でやめてしまうと、症状が悪化する恐れがあります。必ず医師の指示のもと、正しく服用してください。

 

β遮断脈

【β遮断薬】交感神経を沈静化させて血圧を安定させる

ストレスを感じると交感神経が活発になり、全身の筋肉が緊張して硬くなります。血管が収縮して血液の流れが悪くなるため、脈拍数が増えて、血圧も高くなります。β遮断薬で交感神経の働きを弱めると、全身の緊張がほぐれて筋肉もゆるみます。血管の収縮もなくなって血液がよく流れるようになります。心拍数も減るので血圧が安定して、心臓への負担が軽くなります。

低血圧の人は要注意。血圧降下作用で下がり過ぎることも

β遮断薬には、器官を収縮させる働きがあるので、気管支喘息の持病がある人には、処方できません。また血圧を下げる作用もあるので、高血圧の人にも処方しますが、血圧が低い人はかえって血圧を下げてしまうので、別の薬を処方します。その他の副作用としては、低血圧や末端の冷え、不眠、倦怠感、強い吐き気などがあります。また硝酸薬のような即効性は期待できませんが、毎日、服用を続けることで症状の悪化を防ぐことができます。

 

脂質異常症治療薬

【脂質異常症治療薬】コレステロールや中性脂肪を安定させる

脂質異常症(高脂血症)とは、血液中の中性脂肪値やLDL(悪玉)コレステロール値が高くなったり、HDL(善玉)コレステロール値が少なくなる病気です。脂質異常症治療薬で、血液中の脂質を下げて、心筋梗塞・狭心症の予防・再発を防ぎます。脂質異常症治療薬を大きく分けると、①中性脂肪を下げる薬、②LDLコレステロールを下げる薬、③HDLコレステロールを上げる薬の3つに分類されます。どの脂質異常症に該当するかによって、処方される薬が変わってきます。

スタチン系とフィブラート系の併用は禁忌

脂質異常症治療薬には、スタチンやフィブラート系、EPA製剤など、複数の種類があります。スタチンは、LDLコレステロールを減らす薬で、肝臓内のコレステロールを合成する酵素の働きを抑えて改善。抗血栓作用・動脈硬化予防作用もあります。フィブラート系の薬は、中性脂肪を分解する酵素を高めて、その合成を阻害して、中性脂肪を減らします。ただし、スタチンと併用すると、骨格筋壊死や筋障害を起こす恐れがあり、原則として禁忌になっています。

 

硝酸薬

【硝酸薬】狭心症の発作を即座に鎮めるニトログリセリン

硝酸薬は血管拡張薬に分類され「ニトログリセリン」の名で知られる薬です。心臓に酸素を送る血管や、全身の末梢神経が拡張して血液の流れがよくなり、心臓への負担が軽くなります。発作が起きた時に服用すると、すぐに症状が治まるので、狭心症の発作を抑える薬として使われています。即効性のある薬ですが、心筋梗塞で血流が完全に止まった場合は効果がありません。ニトログリセリンが効くかどうかで、心筋梗塞と狭心症のいずれかを正確に判断することができます。

錠剤とスプレーの2タイプ。服用後30分効果が持続

硝酸薬として主に使われるのが、「ニトログリセリン錠」や「硝酸イソソルビド錠」です。口の中で溶かす錠剤タイプと、口の中に吹きつけるスプレータイプがあり、服用後1分程度で効果が現れ、30分程度持続します。即効性がありますが、血圧の低下・頭痛・めまい・動悸などの副作用があります。ED治療薬との併用は禁忌。服用後15分以上、胸の痛みが続く時は、心筋梗塞の疑いがありますので、すぐに病院に行ってください。

 

血栓溶解剤

【血栓溶解剤】血栓を直接溶かして原因を除去する

急性心筋梗塞などで、すでにできた血栓や梗塞を溶かし、血流を改善する薬です。発作が起きてから、経過時間が短い場合に使用します。血栓を溶かすことで、心筋梗塞の原因を直接取り除くことができます。代表的な薬は、ウロキナーゼやアルテプラーゼ、チソキナーゼなど。いったん改善しても、再び血栓ができる可能性がある場合は、静脈から血栓溶解剤を注入してカテーテルで吸引し、血液の流れをよくするために、ステントを留置する場合があります。

効果的に血栓を溶解して安全性も高いt-PA

急性心筋梗塞の治療薬には、ウロキナーゼやt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベータ)がありますが、最近では、t-PAを第一選択にする医療機関が増えています。この薬は血栓に吸着した物質を活性化させて、血栓を溶かす働きがあり、ウロキナーゼと違って、全身の血液には作用しません。効果が非常に高く、しかも安全性も極めて高いので、t-PAが多く使われるようになりました。

 

心筋梗塞・狭心症を予防
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