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重篤な症状につながる労作性狭心症

動脈硬化などが原因で冠動脈に狭窄が起こり、血液の流れが阻害されてしまう労作性狭心症は、運動などを行った際に症状が発生します。心筋梗塞といった命に関わる疾患に繋がる場合があるため、早急に治療が必要であるとされているものです。

この記事では、労作性狭心症の症状やメカニズム、発症に関わる危険因子、さらに診断方法や治療、予後などについて解説していきます。

労作性狭心症とは

労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)とは、心臓の冠動脈が狭窄してしまい、血液の流れが悪くなってしまう病気を言います。運動(=労作)を行った際に症状が起こるため、労作性狭心症と呼ばれています。症状はすぐに消失するものの、放置しておくと不安定狭心症や心筋梗塞など、重篤な症状に進展する可能性が高いことで知られています。

労作性狭心症は虚血性心疾患の一つ

労作性狭心症とは、虚血性心疾患のひとつとされています。虚血性心疾患とは、何らかの原因によって冠動脈の内部が狭くなって血液が流れにくくなっている状態のこと。狭心症の他にも、冠動脈が完全に詰まってしまう心筋梗塞も虚血性心疾患に分類されています。

狭心症は、動脈硬化が大きな原因となる労作性狭心症の他にも、冠動脈の痙攣により血液が流れにくくなる冠攣縮性狭心症といった種類があります。

労作性狭心症は増加傾向にある

虚血性心疾患、中でも特に労作性狭心症は現在増加傾向にあると言われています。

心筋梗塞と労作性狭心症を合わせた発生率を見てみると、都市部の40〜50歳において1964〜71年は「年間0.27/1,000人」の発生率だったものが、1988〜95年になると「0.90/1,000人」となっており、増加傾向にあると言えます。さらに、60〜79歳でもPTCA(経皮的冠動脈形成術)が行われた例を含めた場合、「年間2.62/1,000人」から「年間3.79/1,000人」と増加傾向を認めたという調査結果があります。(虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版) より)

労作性狭心症の自覚症状

労作性狭心症が起こった場合、胸の圧迫感や痛みが主な自覚症状です。また、胸の痛みの他にもさまざまな症状が起こるとされていますが、一見心臓とは全く関係ないと判断しがちなものも。気になる症状があって医療機関を受診したら、実は労作性狭心症の症状だったという可能性もあります。

胸の圧迫感や痛みを感じる

代表的な症状としては、胸の圧迫感や痛みが起こり、呼吸困難やめまいなどを感じることが挙げられます。この時の痛みは灼熱感、締め付けられるような感覚と言われています。労作性狭心症の場合、胸の痛みや圧迫感を感じても、安静にして入ればその症状は数分で消失することがほとんどです。
場合によっては嘔吐をしたり歯や喉が痛むといった放散痛が見られることもあるため、歯が痛いと思っていたら心臓に原因が見つかったというケースもあります。

運動したり、重いものを持った時に起こりやすい

労作性狭心症が起こるケースとしては、運動をしている時、階段を駆け上がった時、重いものを持った時など、身体的にストレスがかかった時に発作が起こる傾向があります。
胸の痛みなどを感じた場合でも、数分安静にしていると症状が消失するため、症状が軽いうちには病院を受診しないケースが多く見られます。しかし、放置していると悪化していく可能性が高いため、早めに受診し、治療を開始しましょう。

労作性狭心症のメカニズム

労作性狭心症は、冠動脈の内側が狭くなり、一時的に血液の流れが悪くなることでさまざまな症状が発生するものです。この冠動脈が狭くなる原因としては、動脈硬化が大きく関わっていると言われています。

冠動脈の狭窄による血液の供給不足

重いものを持つ、階段を上がる、坂道を駆け上がるといった動作を行う場合には、心臓から体内に血液を多く送り出す必要があります。通常はスムーズに心筋へ血液の供給が行われますが、動脈硬化などが原因で冠動脈に狭窄(冠動脈の内側が狭くなってしまうこと)が起こっていると、体が必要としているだけの血液の供給ができなくなり、一時的な「心筋虚血状態」と呼ばれる状態に。労作性狭心症はこのようなメカニズムで起こります。

動脈硬化が起こり始める50歳から70歳に多く見られる

動脈硬化が大きな原因となる労作性狭心症は、動脈硬化が起こり50代から70代以降で多く見られる傾向があります。もちろんどの年代でも動脈硬化は起こる可能性があるため、まだその年代でないから安心というわけではありませんので注意が必要です。

労作性狭心症の危険因子

労作性狭心症は、動脈硬化が大きな原因となることがわかっています。そのため、危険因子として挙げられるものは、動脈硬化の危険因子とも類似している点が特徴と言えるでしょう。主な危険因子として挙げられているものは下記のようなものがあります。

労作性狭心症は、動脈硬化が大きな原因となることがわかっています。そのため、危険因子として挙げられるものは、動脈硬化の危険因子とも類似している点が特徴と言えるでしょう。主な危険因子として挙げられているものは下記のようなものがあります。

  • 糖尿病

    糖尿病を発症すると、深刻な血管の老化が起こることが知られています。この場合、血管壁が厚くなったり硬くなったりすることで柔軟性が失われ、結果として血液の通り道が狭くなる動脈硬化に繋がってしまいます。この糖尿病を原因とする動脈硬化は、心臓や脳の血管を詰まらせる原因となるため、非常に注意が必要。
    また、糖尿病を発症している場合には神経障害の影響で、発作が起きているにもかかわらず症状が全く出ないケースもあります。

  • 喫煙

    喫煙をすると、化学物質が血管内に「炎症」を起こし、血管を痛めることにつながります。さらに喫煙中は軽度の一酸化中毒となってしまうため、慢性的な酸素欠乏に。酸素不足を解消するため、体は血液を多く作り出そうとし、結果として血液が固まりやすい状態になります。このようなさまざまな理由により、動脈の内側が狭くなってしまい、動脈硬化のリスクが上昇してしまうのです。
    また、喫煙すると動脈硬化を防いでくれるエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの働きが妨げられるため、結果として動脈硬化につながるリスクが高まることも指摘されています。

  • 高血圧

    血圧が高い状態が続くと、血管は常に張り詰めた状態に置かれることに。このことによって血管の柔軟性が失われ、厚く固い状態になってしまうため、高血圧を原因とする動脈硬化に繋がります。

  • 脂質異常症

    脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪が増加している状態のこと。増えてしまった脂質が血管の内側に溜まって血管の中に塊を作ってしまい、血液の流れが滞ります。恐ろしいのが、脂質異常症になってしまっても自覚症状が出ない点。労作性狭心症などの発作が起こることによって、初めて脂質異常症の恐ろしさに気付くパターンがほとんどです。

労作性狭心症の診断方法

労作性狭心症が疑われる場合、さまざまな検査を行います。しかし、労作性狭心症は症状が出現している最中でなければ心電図や心エコーを実施しても異常初見として現れません。この特徴が、労作性狭心症の診断を困難にしているため、病歴の聴取を行った上でさまざまな検査を行い、診断を行っていきます。

侵襲的検査の種類

「侵略的検査」とは、体に何らかの危害を加えて検査を行う方法です。具体的には心臓カテーテル検査が挙げられます。これは麻酔を行った上で血管に細い管を入れ、造影剤を注入することにより冠動脈を撮影します。心臓カテーテル検査を行うことで、冠動脈が狭くなっている部分や詰まってしまっている部分をはっきりさせることができるのです。
一般的には、まず非侵略検査を行った上で狭心症の可能性が高い、となった場合、さらに確実な診断を行うために実施します。

非侵襲的検査の種類

「非侵略検査」とは、体に直接的な危害を加えずに検査を行う方法で、いわゆる「痛くない検査」です。非侵略的検査の例としては、心電図をつけたままエルゴメーター(自転車のようなもの)を漕ぐ運動負荷心電図や胸に超音波を当てて心臓の構造や動き、血液の流れを見られる心エコー、胸に電極を貼った上で腰に携帯型の小さな記録用の心電図をつけて24時間心電図を記録するホルター心電図などが挙げられます。

労作性狭心症の治療方法

医療機関で検査を行い、労作性狭心症と診断された場合には治療が必要です。この場合には「生活習慣の改善を行って動脈硬化の進行を抑える」ことに加えて「薬物療法」「外科手術」を症状に応じて選択します。特に生活習慣の改善については、本人のやる気に左右される部分がありますので、周囲の協力を得ながら進めていくことが必要不可欠です。

動脈硬化の進行を抑える

労作性狭心症を発症する原因としては、冠動脈の動脈硬化が多いことがわかっています。そのため、労作性狭心症を治療する上では生活習慣を整えて動脈硬化の進行を抑えることが必要です。
例えば喫煙の習慣がある人は禁煙に取り組む、脂質異常症や糖尿病、高血圧などの治療、肥満傾向がある人は減量に取り組むことで、「動脈硬化の危険因子」を取り除いていきます。

薬物療法

労作性狭心症を発症した場合、薬物での治療も行います。この時に用いられるのは、発作が起きた時に症状を抑えるための薬と、発作を予防するための薬です。
発作が起きた時は即効性のあるニトログリセリンなどの血管を拡張する働きを持つ薬を用います。使用することにより冠動脈を広げて心臓の負荷を減らし、症状を改善します。即効性があり、通常は2〜3分程度で効果が見られますが、効果が見られない場合は心筋梗塞が疑われます。また、発作を予防するための薬としては、冠動脈を拡張させる持続型硝酸薬や、心筋の活動量を抑えるβ遮断薬などが用いられます。
他にも、アスピリンなどの抗血小板薬や、スタチンなど動脈硬化の進行を抑える働きのある薬もよく併用されます。

外科手術

労作性狭心症の治療においては、症状が重いと判断された場合には外科手術が用いられることもあります。例えば風船のついた細いカテーテルを冠動脈の細くなった部分まで入れ、内側から風船を膨らませて血液の流れを良くする経皮的冠動脈形成術(PTCA、バルーン療法とも呼ばれます)を行ったり、血管の内側に「ステント」と呼ばれる金具を入れ、狭くなってしまった血管を広げる血管内手術を行います。また、冠動脈の細くなってしまった部分を迂回して血液の流れを作るためのバイパス手術を行う場合もあります。

労作性狭心症の予後

労作性狭心症は、早い段階で治療を行うことができれば後遺症も残らないとされています。ただし、注意したいのは治療をせずに放置してしまったケース。数分で症状が消失するからといって治療を行わないでいると、より重篤な症状に進んでしまう可能性があります。

放置するとより重篤な疾患に進展する可能性

安静にしていれば症状がすぐに収まる労作性狭心症の段階であれば、心臓の筋肉は壊死という段階まで進んでいることは少ないと言われています。しかし、症状がすぐに治まるからといって軽く見て放置してしまうと、より症状が重篤な不安定狭心症や、場合によっては急性心筋梗塞に進展する可能性があります。

できるだけ早く治療を開始することが大切

重篤な症状に進展させないためにも、労作性狭心症の疑いがある場合にはできるだけ早いうちに検査・治療を行うことが必要と言えるでしょう。早期の段階で治療を行えれば、その後大きな後遺症も起こらずに生活できるケースが多くなっています。

労作性狭心症を予防するために

労作性狭心症を予防するためには、まずは動脈硬化に繋がる危険因子を生活習慣から取り除くことが必要です。禁煙する、食生活を見直す、運動習慣を取り入れる、肥満傾向にある場合には減量に取り組むといった方法が考えられます。
また、動脈硬化は年齢も関連してくるため、ある程度の年齢になったら、定期的に検診を受けることが大切です。特に喫煙の習慣や高血圧、脂質異常症、糖尿病など、労作性狭心症の危険因子を持っている人は、特に症状がなくても検査を受けてください。検査を受けた結果に応じて、生活習慣の改善や治療に取り組む必要があるかもしれませんが、その場合は医師の指示に従い、治療を進めていきましょう。

日本人に多い「冠攣縮性狭心症」にもご注意を

「狭心症」と聞くと、動脈硬化によって起きる症状をイメージする方が多いよいうですが、狭心症にはもうひとつ種類があります。それが「冠攣縮性狭心症」という病気で、労作性狭心症と違って安静時にも起きるという特徴があり、はっきりした原因はわかっていません。
冠攣縮性狭心症というのは、突然心臓の血管が収縮してしまう「冠攣縮」によって引き起こされます。冠攣縮は、狭心症患者全体の40~60%に確認されており、決して軽視できない症状です。
なお、日本人における冠攣縮性狭心症の発症比率は、欧米人におけるそれに比べて非常に高いことで知られています。これには日本人の遺伝的体質が影響しているとも考えられています。
狭心症のリスクや予防方法について考えるのであれば、労作性狭心症と併せて、冠攣縮性狭心症についても知っておきましょう

 

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