心室瘤

心筋梗塞で壊死した心筋が変化して瘤を作る

心室瘤は心筋梗塞の合併症の一つで、心室壁が薄くなり、心内腔の圧力で押されて瘤状(地のコブ)になり、それが外側に飛び出した状態をいいます。心筋梗塞により壊死した心筋が変化して、心室瘤が発症すると考えられています。心筋梗塞してから1か月~1年後の検査で発見されることが多く、不整脈や狭心症の原因になります。

 

心室瘤とは

発症例はごくわずかでも
発症すると非常に危険な状態に

心室瘤は、先天的・後天的に、心室壁に出来た瘤(コブ)が膨らんだ状態のことをいいます。後天的な場合は、心筋梗塞の合併症として発症することが多く、壊死した心筋に圧力がかかって飛び出します。飛び出した部分は、心室壁が薄くなっているので、破裂しやすい状態となり、血栓もたまりやすくなります。ごくまれな疾患で、世界でも100例程度の報告しかありません。飛び出した瘤が大きくなると、不整脈や狭心症、心不全につながるので、早めの治療が必要です。

真正心室瘤と仮性心室瘤より
深刻なのは「仮性心室瘤」

心室瘤には「真正心室瘤」と「仮性心室瘤」があります。真正心室瘤は、左心室の壁にコブ(瘤)ができた状態で、主に左心室前壁と心尖部に起きることが多く、急性心筋梗塞患者の5~10%に見られます。「仮性心室瘤」は、心室の壁が破裂して血栓ができ、その周囲の組織が心臓の周りを取り囲んでいる袋(心嚢=しんのう)と癒着して、瘤ができた状態。左心室の後壁にできることが多く、破裂する危険が非常に高いので、緊急手術が必要です。

 

イラスト心室瘤の症状

全身に血液が流れにくくなり
心不全と同じ症状が現れる

心室瘤が起きると、狭心症や心不全と同じ症状が現れます。特によく見られるのが、息切れや動機、呼吸困難です。瘤ができることにより、心臓はポンプとしての役割が果たせなくなります。収縮しても血流が悪いので、心筋が酸素不足に陥って、心不全と同じ状態に。全身が疲れやすくなったり、動悸、息切れなどの症状が現れ、ひどくなると呼吸困難に陥ることもあります。人によっては自覚症状がない場合もあるようです。

胸が圧迫されるような痛みは
狭心症の症状と似ている

心室瘤を発症すると、心筋に十分な血液供給ができなくなり、狭心症と同じような症状が現れることがあります。押さえつけられたような圧迫感や焼けるような灼熱感、締め付けられるような絞扼感などの胸の痛みを訴えます。また心臓を覆っている袋状の心嚢に、大量の血液が流れ込むと心タンポナーデに。血圧が低下したり、心音が弱くなったり、脈が非常に速くなったりして、大変危険な状態に陥ります。

 

イラスト心室瘤の検査

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診断の決め手となる
心エコー検査で瘤を検査

胸の痛みや呼吸困難などの症状がある場合は、所見検査(スクリーニング検査)を行います。検査項目には、胸部エックス線検査、心電図検査、心エコー(超音波)検査、MRI検査、CT検査があります。飛び出した瘤の発見のきっかけとなる胸部レントゲン検査で、所見の決め手となる検査が心エコーです。心室の瘤の大きさや血栓などが認められた場合、心室瘤と特定して精密検査を実施します。

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心臓カテーテル検査で
手術の適応有無を調べる

精密検査では、心臓カテーテル造影検査を行います。カテーテルを挿入して、そこから造影剤を注入して、左室や冠動脈をエックス線に撮影して調べます。左室造影検査では、左室や左室壁の形や動きや血栓の状態がわかります。冠動脈造影では、冠動脈にある他の病変の有無を確認。これらの検査は、手術の適応や、切除範囲、冠動脈バイパス術の適応の有無などを検討する上で重要です。

 

イラスト心室瘤の治療

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心機能が低下した場合は
手術で瘤を切除する

心室瘤の治療は、症状のレベルによって変わりますが、比較的軽度の場合は、薬物療法だけで対応可能です。薬物療法では、心不全と同じ治療を行い、重度で心機能が低下している場合は心室瘤切除手術を行います。飛び出している瘤の部分を切除し、心臓の内側に修復用のパッチをあてて、切り取った部分を塞ぎます。瘤を切除することで、心室の機能が良好に。発症前の状態に戻るわけではありませんが、息切れや呼吸困難などの心不全の症状が改善します。

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左室形成術で心臓を
再建して負担を軽減する

心室瘤の治療には、心室瘤切除手術のほかに、左室形成術があります。これは、心筋梗塞によって壊死した心筋を切除して、心臓を小さく再建するものです。左室の容積を縮小することで、心臓への負担がなくなり、血液の流れを回復させます。この手術には、バチスタ手術・ドール手術・オーバーラッピング手術など、いくつかの術式がありますが、執刀医や医療チームの経験と技術力が問われるため、危険度が高く、限られた医療機関のみでしか対応できません。

 

イラスト心室瘤の予防法

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心筋梗塞の予防が
心室瘤の最善の予防法

心室瘤は、心筋梗塞の合併症として発症するので、それ単独での予防は非常に難しいといえます。むしろ、原因となる心筋梗塞にならないことが、一番の予防です。心筋梗塞は生活習慣病になるので、食生活や生活習慣を見直すことで、予防が可能に。また、急性心筋梗塞を発症後、1か月~1年で発症することが多いので、定期健診をきちんと受けて経過観察をし、医師の指導のもとで治療を継続していくことが大切です。

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生活習慣の見直しと
適度な運動で予防する

心室瘤は、心筋梗塞を予防することで、防げます。バランスの悪い食事や不規則な生活、運動不足や過度なストレス、過労や睡眠不足が続くと心臓に負担がかかります。高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満にもなりやすく、動脈硬化を促進してしまうことに。ウォーキングや軽いジョギング等の有酸素運動を行うと、酸素を取り込んで余剰エネルギーを燃焼し、動脈硬化を防ぐ効果があります。適度な運動を続けて、心室瘤を防ぎましょう。

 

心筋梗塞・狭心症を予防
するためには?