心臓が破裂する急性心筋梗塞の合併症
心破裂は、急性心筋梗塞の治療後に多くみられる合併症です。壊死した心筋の圧力に耐えかねて壁に穴が開き、左心室の外壁が破裂します。心筋梗塞が発症してから、3~5日で心破裂が発症するケースが多く、迅速かつ適切な手術が必要です。特に、破裂した部位が左心室自由壁破裂になると死亡率が非常に高いので、予防策が必要です。
心破裂は、心筋梗塞の合併症の一つで、心筋梗塞によってダメージを受けた心筋が破裂する病気です。急性心筋梗塞を発症した患者の3~10%が発症するといわれ、緊急手術により一命を取り留めることはできますが、治療成績はあまりよくありません。破裂する部位により、左室自由壁破裂・心室中隔穿孔・乳頭筋断裂等に分類されます。また破裂した状態により、じわじわと出血するタイプから、大出血をするタイプまであります。
初めて心筋梗塞になった人や、高齢者や高血圧の人に多くみられ、心筋梗塞の他僧帽弁置換術後や心内膜炎、心臓腫瘍、浸潤性疾患などが影響しています。心破裂の兆候に、心膜摩擦音があります。カテーテル治療と薬物療法で、発症例は減少傾向ですが、血栓溶解療法により心破裂を助長するケースも。一度心破裂を起こすと細胞が壊死して、再び元の状態に戻すことはできませんので、生活習慣病のある人は気をつけてください。
心破裂の症状として、継続的な胸の痛みや失神、頸静脈がパンパンに張るなどがあります。また発症した部位によっても異なります。左室自由破裂は心室が壊死して壁の一部が破けて出血した状態で血圧低下や呼吸困難が伴います。心室中隔穿孔は、心筋梗塞により、心臓の右室と左室間の筋肉が壊死して穴が開き、右心室と左心室の間に血液が流れ込んで、心機能が低下。胸の痛みが現れ、その後、呼吸困難になります。また聴診器を当てると心臓に雑音が聞こえます。
心破裂とともに、心タンポナーデに陥ることがあります。心タンポナーデとは、心破裂などによって心臓と心膜との間にある心膜腔に血液等がたまり、心機能が低下する状態です。血液を送り出す量が減ってしまうため、全身の倦怠感や血圧低下、脈拍の増加・呼吸困難・肝臓の腫れ・下肢のむくみ、指先の血色が悪くなるチアノーゼなどの症状が現れます。また急激に心タンポナーデを発症した場合は、ショック状態になり大変危険な状態に陥ります。
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心破裂を発症すると、急速に悪化するため、緊急な治療を要します。診断は非常に難しく、血圧・脈拍・体温・呼吸数・意識レベルなどのバイタルサインや、視診・触診・聴診が重要な役割を果たします。初期検査として、胸部レントゲン検査、心電図検査などがあり、心臓や心室・心房の状態を確認して病名を特定します。その後、心エコー検査や心臓超音波検査、心臓カテーテル検査等で、病巣を特定して診断を下します。
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心室中隔穿孔や乳頭筋断裂の特徴は、心音です。聴診器で心音を聞くと、雑音が聞こえてくるので、診断の目安になります。破裂した心臓の出血状態は、心臓超音波検査で確認します。穴の開いた右室左室間に、血流がどの程度流れ込んでいるのかを確認するために、カテーテル検査や、心エコー検査を行います。胸の痛みや呼吸不全、血圧低下なども参考になり、検査結果や聴診・症状等を踏まえた上で総合的に判断します。
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左室自由壁破裂を発症すると、手術以外に治療法がありません。出血が少ない場合は、ある程度余裕がありますが、大量出血してショック状態に陥っている時は、救急搬送しなければ間に合いません。手術が難しい場合の初期治療は、カテーテルを挿入して、心臓まで送り込み、出血した血液を吸引します。その後、開胸手術をして止血をします。出血が少ない場合は止血剤で対応できますが、大量出血している場合は、人工心肺装置を使用する必要があります。
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心室中隔穿孔も、手術以外に有効な治療法がありません。発症すると、急激に血圧低下や呼吸不全に陥りますので、早めの手術が必要です。比較的軽度の場合でも、急変する可能性がありますので、基本的には緊急手術になります。手術では、人工心肺装置を使用して体外循環を行い、心室中隔にできた穴に布状の膜をはり、穴を覆い塞ぎます。非常に緊急性を有する手術ですが、即座に対応できる医療機関の数が限られているため、対応が遅れてしまうのが現状です。
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心破裂は、心筋梗塞の合併症として発症するため、心筋梗塞にならないことが、一番の予防法です。まずは心筋梗塞をもたらす、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病、運動不足による肥満、喫煙やストレスをコントロールする必要があります。高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満の4つは、心筋梗塞以外の生活習慣病や動脈硬化をもらす危険因子です。食事や運動、生活習慣を見直し、処方されている薬があれば、必ず医師の指示を守ってきちんと服用してください。
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高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満を改善するには、食事が大切です。塩分やカロリー、動物性脂肪、糖質、油の取りすぎは、中性脂肪やコレステロールを増やし、動脈硬化や生活習慣病を招きます。DHA・EPAの多い青魚や、たんぱく質・タウリン、αリノレン酸、マグネシウム、カルシウム、食物繊維の豊富な食材を選び、和食を中心にしたメニューを考えて。またなるべく自炊を心掛け、よく噛んで食事を楽しみましょう。また水分を適度にとることも忘れずに。
*画像引用元:国立病院機構埼玉病院公式HP
(http://saitama-hospital.jp/)
和光市に立地する病院で、最寄りの成増駅は東武東上線・有楽町線・副都心線の3路線が乗り入れているなどアクセスに優れています。そのため和光市の市民だけでなく東京の北西部地域に在住している人にとっても利便性が高い病院。体への負担が少ない心臓血管手術を積極的に採用しており、心臓リハビリテーションの認可も受けています。
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患・心臓弁膜症・心筋症・心筋炎・心不全・急性大動脈解離・胸部大動脈瘤手術・腹部大動脈瘤・閉塞性動脈硬化症・急性動脈閉塞・下肢静脈瘤など。
1968年、埼玉県の心臓外科として初の開設。
*画像引用元:国立病院機構大阪医療センター公式HP
(http://www.onh.go.jp/)
365日24時間体制で対応。近隣の医療機関との連携を高めるために定期的に勉強会や講演会が行われています。
診療の対象としているのは、狭心症・心筋梗塞・心不全・弁膜症・心筋症・不整脈・大動脈瘤・大動脈解離・末梢血管の閉塞性疾患や心臓や血管の疾患など。
2017年度の臨床実績は、心臓カテーテル検査512例、経皮的冠動脈形成術295例、経皮的カテーテルアブレーション103例、心血管エコー6,835例、負荷心筋シンチグラフィー418例、冠動脈CT420例など。全体では外来患者数23,432人、入院患者数は1,189人。
*画像引用元:国立病院機構福岡東医療センター公式HP
(http://www.fe-med.jp/)
福岡市と北九州市の間に立地。治療・手術において得意としている分野は、腹部大動脈瘤・閉塞性動脈硬化症、下肢静脈瘤。
胸・頭・首を除く全身の動脈疾患と下肢静脈瘤の治療が対象です。
1962年に発足。2014年には重症患者に高度な医療技術を提供する三次救命救急センターと感染症センターを開設。地域がん診療連携拠点病院・地域医療支援病院・災害拠点病院としても機能も担っています。
*画像引用元:国立病院機構豊橋医療センター公式HP
(http://www.toyohashi-hosp.jp/)
救急医療に全力を挙げて取り組んでおり、病院全体では救急車の受け入れ台数は年間3000台以上。開院以来、3度の愛知県知事表彰を受けています。
専門分野は、狭心症や心筋梗塞症などの虚血性心疾患・心不全・不整脈・閉塞性動脈硬化症など末梢動脈疾患。
前身となった病院から数えて約30年の歴史を持ち、通算だと心臓カテーテル検査30,000例以上、カテーテル治療は約10,000例の実績を誇ります。2016年度の主な診療実績は、心臓カテーテル検査が434例、冠動脈インターベンションが106例、急性心筋梗塞症24例など。心臓超音波検査は2800例。
*画像引用元:函館厚生院函館中央病院公式HP
(https://chubyou.com/index.php)
北海道大学循環器外科のバックアップを受けており、道南(北海道南部)においては心臓血管外科の中心的な医療施設として活動。外来では心臓血管外科は30分ごとの時間予約制を採用しています。
治療の対象となる年代は新生児から超高齢者まで。心臓手術・血管手術・カテーテルステントを用いた末梢血管治療・深部静脈血栓症(DVT)の予防と治療などが行われています。
1930年に開設した歴史と伝統のある病院。2017年度に行われた手術は4,382例で、入院患者数は139,385人。
*画像引用元:沖縄協同病院公式HP
(http://oki-kyo.jp/)
いずれの疾患に対しても体への負担の少ない手術が選択されており、患者の早期社会復帰をサポート。冠動脈疾患には心臓を停止させずに手術を行う心拍動下冠動脈バイパスを取り入れています。
扱っている疾患は、冠動脈疾患 弁膜症 大動脈瘤・下肢静脈瘤など。治療方法としてはステントグラフト内挿術・バスキュラーアクセス手術などが採用されています。
1983年に開設。2013年以降は長崎大学との連携を強め、症例数が増加。近年では1年間に60~70例の心臓手術、約100例の末梢血管手術が行われています。
心筋梗塞・狭心症を予防
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