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血管の異常な収縮

心筋梗塞の大半は、動脈硬化や血栓などによって心臓の冠動脈と呼ばれる血管が狭くなったり、閉塞したりすることで起こります。そしてもうひとつ、血管が異常な収縮をおこす血管攣縮(れんしゅく)でも心筋梗塞が起こることがあるのです。

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心筋梗塞のもうひとつの原因、
血管攣縮とは?

血管攣縮とは、血管が突然けいれんをするように、異常に収縮する現象を言います。血管攣縮が起こると心臓の冠動脈の内腔が急に狭くなって血流が滞ったり、完全に詰まってしまうことで心筋梗塞を引き起こすのです。

 

なぜ血管が突然異常収縮するのか原因はわかっていません。コレステロール値が高いと起こる確率は高い傾向にありますが、健康な人にも起こるのが怖いところ。動脈硬化が進んでいる血管でこの異常収縮が起こると、すでに血管が狭くなっているため、小さな異常収縮でも血流が滞り、命に関わる場合もあります。

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なぜ血管の異常収縮が起こるのか?

何が原因となって血管攣縮が起こるのかはわかっていませんが、そのメカニズムは解明されています。

 

血管は平滑筋細胞(筋肉)でできていて、人間がどのような動き(動作)をしたとしても、その状態は一定に保たれるようになっています。細胞はカルシウムイオン(Ca2+)で動くのが生物の原則。ところが、血管の攣縮は平滑筋細胞のカルシウムイオン(Ca2+)の異常増加では引き起こされません。このことは、細胞質のカルシウムイオン(Ca2+)の測定で実証されています。

 

つまり、血管の異常収縮(血管攣縮)は、生物の原則では説明できない現象なのです。

 

参照元:「血管異常収縮の分子機構と分子標的治療薬の探索」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/133/3/133_3_124/_pdf

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血管の異常収縮を
予防する方法はあるのか

しかし近年、山口大学小林誠教授のチームの研究により、細胞膜を構成する脂質の一種から作られる「SPC(スフィンゴシルホスホリルコリン)」という物質が、血管の異常収縮を引き起こす酵素を活性化させる働きがあることが解明されました。

「血管異常収縮の分子機構と分子標的治療薬の探索」では、血管の異常収縮を引き起こすメカニズムについて次のように詳しい報告があります。

 

「血管平滑筋異常収縮(血管攣縮)の分子メカニズム」より

血管は、その周囲を取り囲む「血管平滑筋」によって収縮と弛緩を繰り返しています。

正常な場合、血管平滑筋による収縮は細胞質のカルシウムイオン(Ca2+)濃度によって調節されます。

これに対し、血管平滑筋によって異常な収縮を示す「血管攣縮」では、「Rhoキナーゼ」(Rho-kinase)という酵素がカルシウムイオンの感受性を増強させ、血管平滑筋による収縮弛緩を引き起こします。

研究の結果、Rhoキナーゼが活性化することによりカルシウムイオンの感受性が増す要因の1つとして、「SPC(スフィンゴシルホスホリルコリン)」という物質が特定されました。

つまり、正常な血管平滑筋収縮がカルシウムイオンの濃度の上昇によって起こる一方で、SPCの刺激によって起こる血管平滑筋異常収縮は、細胞質のカルシウムイオン濃度を変化させずに起こっていることが判明したのです。

また、くも膜下出血を発症したあとに高確率で起こる脳の血管攣縮は、重大な合併症の原因となるものですが、分析によって髄液中のSPC濃度について新たな事実が判明しました。

くも膜下出血患者のSPC濃度を分析したところ、くも膜下出血以外の疾患を持っている人と比較して異常に高い数値を示したのです。

これによってSPCが血管の異常収縮を引き起こす重要な要因になることが裏づけられたのです。

 

このように、血管の異常収縮を引き起こす酵素を活性化させる物質「SPC(スフィンゴシルホスホリルコリン)」が特定されています。

そして、血管攣縮を起こすメカニズムを阻害する物質を探していたところ、イワシなどの青魚に多く含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)が血管攣縮を防ぐ効果があることを突き止めました。

従来の治療法では、正常な血管収縮をも抑制するしか方法がなく、血圧の低下や副作用が免れませんでしたが、EPAは異常な攣縮のみ阻害することが臨床実験でわかっています。

通常、生魚に存在しているEPAは、エネルギー状態が強く流動性のある立体構造(シス体)をしており、血管攣縮に対する高い抑制効果があります。

しかし、加熱することでこの立体構造が崩れると抑制効果も弱くなります。

小林教授のチームでは、EPAの立体構造をこわさないように、抽出精製する方法も生みだしました。これを「小林式EPA」と呼んでいます。

注目の成分「小林式EPA」開発の経緯やメカニズム、また、唯一「小林式EPA」が配合されている商品の説明は以下のサイトで確認してください。

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血管攣縮が起こるとどうなる?

心臓で血管の異常収縮(攣縮)が起こると、冠動脈が狭くなり、酸素や栄養が心臓に運ばれなくなります。すると、20~30分で心筋梗塞が起こり、その部分の筋肉が壊死してしまいます。一度壊死した部分は元には戻らず、その状態が続くと約45分で死亡に至ってしまいます。自覚症状としては、胸の締め付けられるような痛み肩から腕にかけての痛みが起こり、息苦しさや動悸を伴うことも多いようです。人によっては、お腹に痛みを感じることもあるようです。

 

ちなみに、脳で血管の異常収縮(攣縮)が起こると、5分で大脳皮質がダメージを受け、時間がたつごとに脳の中へとダメージが広がり、最終的に脳幹までダメージを受けると死に至ってしまいます。

参照元:林田憲明(2004)『狭心症・心筋梗塞治療の最前線と患者の心得』株式会社双葉社p66-67

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血管攣縮の代表的な事例
「くも膜下出血」

血管攣縮でよく知られているのが、くも膜下出血の発症後に起こる合併症です。

 

くも膜下出血を起こしてから3日目から2~3週間までの間に、脳の血管が異常収縮して血液の流れが悪くなるという合併症で、くも膜下出血をおこした方の30~70%に現れるとされています。怖いのは、くも膜下出血の発症直後ではなく、やっと回復してきたと思ったころに起きること。

 

脳血管攣縮により意識状態が悪くなったり、手足のマヒや言語障害が悪化したり、程度によっては、脳梗塞を起こして死に至ることもあるのです。

 

現状の治療としては、攣縮の起こった場所や程度にもよりますが、脳の血管の攣縮を抑える薬剤を投与して症状を緩和させる処置などを行います。

 

米国心臓協会(AHA)及び米国脳卒中学会(ASA)は、「脳動脈瘤によるくも膜下出血」(aSAH)の管理について次のように提唱しています。

「米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中学会(ASA)ガイドライン」より

脳動脈瘤によるくも膜下出血の管理に関するガイドライン

脳動脈瘤によるくも膜下出血は、地域ごとに発症率に差があり、日本とフィンランドでは高く、中米や南米では低い傾向が見られます。

死亡率に関してはアメリカで32%、ヨーロッパで43%、日本では27%との報告も。

脳動脈瘤によるくも膜下出血を起こす引き金となるのは、高血圧や喫煙、それに過度の飲酒など。また、近親者に脳動脈瘤によるくも膜下出血を起こした患者がいる場合は発症リスクが高まる可能性があり、食事の際は野菜を豊富に摂るよう心がけるなど予防が必要となります。

脳動脈瘤によるくも膜下出血による頭痛の特徴は突発性であることと瞬時にピークに達すること。その前に10~43%の人に軽度の警告頭痛が起こります。脳動脈瘤が再出血を起こすと死亡率はさらに高まり、進行とともにさらに深刻な状態をもたらすため、早期に治療を行うことが何よりも重要となります。

脳動脈瘤によるくも膜下出血が起こったあとの経過では、7~10日に脳の血管攣縮が最もよく起こる傾向があり、21日程経過するまでは注意が必要となります。この血管攣縮は遅発性脳虚血を誘発することから、重度機能障害が残り死亡に至るなど、脳動脈瘤によるくも膜下出血後には特に注意しなければならない症状。

脳虚血が起こると脳に血液が行き渡らなくなり、脳の組織に充分な酸素や栄養が供給されない状態に陥って、それが限界を超えると脳梗塞を発症します。くも膜下出血後に血管攣縮が発生するのは、血液内の動脈瘤の破裂によって生じた成分が血管に作用し、収縮させてしまうため。

血管攣縮を予防するためには攣縮を抑える薬剤を投与し、症状を緩和する処置が取られています。

このように、米国心臓協会(AHA)及び米国脳卒中学会(ASA)による「脳動脈瘤によるくも膜下出血の管理に関するガイドライン」でも、くも膜下出血では始めに出血が起こったときの対応によって、そのあとの患者の状態が大きく左右されると説いています。

 

激しい頭痛や嘔吐などが現れた場合にはくも膜下出血を疑い、一刻も早く脳神経外科を受診を受ける必要があります。

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高血圧や狭心症も
血管の攣縮が原因?

狭心症は、痛みが長く続く心筋梗塞に比べて、数分間だけ心臓が痛くなるのが特徴です。

 

動脈硬化による狭心症は、運動したときに酸素不足で血流が少なくなる労作性狭心症です。このケースに攣縮が加わると、完全に血流が遮断され命にかかわるのが怖い点です。

 

これに対して、血管攣縮が原因で起こる狭心症は、安静時にも起こることから、冠攣縮性狭心症あるいは、安静時狭心症と呼ばれています。これは動脈硬化によるものと異なり、安静にしているときには異常がわからないので、予防のしようがないのが現状です。

 

高血圧で病院の薬を飲んでいるが、あまり効果が出ないという場合、血管の異常収縮による高血圧の疑いがあります。これは、軽い血管攣縮が全身で起きている状態です。
いずれにしても、気になる症状がある場合、専門の病院で検査をすることをおすすめします。